各国・各地で「千葉・鴨川 ─里山という「いのちの彫刻」─」
棚田の村へ入ると、まるで時計の針を戻していくように過去へとタイムトラベルしていきます。しかし、ここでの暮らしから見えるのは、過去を突き抜けた「未来の風景」です。

いのちのバトン

2018年11月14日

10月13日土曜日は、鴨川里山トラスト有機米の会の収穫祭を行いました。
この1年間、お米づくりに通ってくださったみなさんの労をねぎらい、そして僕たちを無条件に生かしてくれる水と空気と大地と光に感謝して、僕らはお祝いをしました。

無名の集落ですが、この美しい棚田に多くの人が来てくれることは、本当にありがたいことだと思っています。
僕はみなさんに"ありがとう"と心から感謝の気持ちを伝え、新米をお手渡ししました。

土間のギャラリー

古民家の庭では、友人の藁珈琲洞のしげちゃんが美味しい自家焙煎コーヒーとお菓子の出店をしてくました。しげちゃんの手作りのお店は、なんだか映画のワンシーンのような独特の可愛さがあって素敵です。その美意識はしげちゃんが若い頃、役者をやっていた経験が影響しているのかもしれません。

そして、安房の土で作陶する「あわ焼き」を研究する陶芸家の西山光太さんが、みんなが自分で田んぼの土からつくったお茶碗を焼き上げて持ってきてくれました。さらに嬉しいことに、収穫祭のお祝いとして弥生式に稲わらで焼いた壺をプレゼントしてくれました!
それは、惚れ惚れするほどプリミティブで洗練された美しい佇まいです。

古民家の土間の大きな本棚にずらりと並んでいた本を僕はすべて片付けて、ギャラリースペースとしました。長い時間をかけて煙にいぶされた古民家の黒い室内に、真っ白な空間を設けることは、いつかやりたいと思っていたことでした。新しいギャラリーススペースには、イラストレーターの川村若菜さんのイラストを展示しました。

若菜さんの描く世界が僕は好きです。
微生物や植物の種が人と一緒に楽しく踊るように共存している世界は、彼女の内面から生み出された魂の詩です。

若菜さんは、僕の友人である共生革命家のソーヤー海くんと共にクラウドファンディングで出版した絵本「みんなのちきゅうカタログ」も持ってきてくれました。
これはパーマカルチャーの考えをベースに、人が地球で生きる上で大切なことを、とてもわかりやすく、やさしい言葉でイラストと共に表現されている素晴らしい絵本です。

稲作民族のDNA

みんなが集まったら、僕らは庭で新米の餅つきをしました。
餅米は、集落の大工さんである永倉さんが育てた新米です。
餅つきにはいつも応援してくれる集落の料理上手なおばあちゃん「しろうべえ」さんが、手作りのあんこを持って手伝いに来てくれました。

「よいしょ~、よいしょ~!」
子どもたちと一緒に元気よく餅をつきます。
僕も、僕も! と子どもたちは杵の取り合いで、お母さんが順番ね~、となだめます。

古代から餅つきはハレの日に行うお祝いの行事です。僕たち稲作民族のDNAが呼び起こされるのでしょうか、みんな条件反射的に盛り上がります。
みんなでつくるということは何でも楽しいもので、つき上がった餅はあんころ餅とからみ餅にしました。

最高のスローフード

今回の昼ごはんを担当してくれた料理人は、天津小湊で長くお寿司屋さんを営む中乃見家(なかのみや)さんです。昼食の前に、大将が郷土料理のナメロウのつくり方を実演してくれました。

子どもたちは、大将の見事な包丁さばきにかぶり付きです!
「あ、危ないから、あんまり近づきすぎないでね~」
と、魚をさばく大将は言いながら華麗にさばいていきます。
子どもたちは、その手仕事にガン見です。

そして、房総半島の漁師町から生まれた郷土料理ナメロウが出来上がりました。ナメロウとは漁師が船上で、その時に捕れた魚を叩いて、生姜、ねぎ、味噌などを混ぜた郷土料理で、皿まで舐めるほど美味しいと言われるのが語源です。
鴨川の山の幸から天水棚田で育てた無農薬有機栽培の新米、海の幸から地魚の刺し身とアラ汁、さらにお茶碗まで今日の収穫祭の食事はオール鴨川産の最高のスローフードです。

田んぼの土から自分でつくったマイ茶碗に、自分たちで育てた新米をよそい、炊きたてのごはんを口に運ぶと、甘くみずみずしい旨味が口いっぱいに広がりました。
「うわぁ~、お、おいしい!」
と、喜びの声と笑顔が広がります。
これは最高の贅沢であり、これほど美味しい食事はありません。
自分でお米をつくるようになってから、僕の人生は本当に変わり、素晴らしく豊かになりました。この体験を多くの人と共有したいと思っています。

みんなのちきゅうカタログ

昼食後は、小雨がぱらついて来たので棚田のウッドデッキに張られたデンマーク製の大きなベルテントの中で、イラストレーターの若菜さんと絵本「みんなのちきゅうカタログ」について語り合いました。

なぜここにベルテントがあるかというと、今年から僕は海も山もある鴨川の自然環境を活かして、この地域全体を「アウトドア・スポーツの聖地」にし、自然共生型のまちづくりを進めていこうと自治体に提案し、動いています。
その第1回のプレ・イベントとして10月27日(土)~28日(日)に、ATTバイクパッキング鴨川を開催することになりました。サイクリストたちはキャンプ道具を自転車にパッキングして、鴨川と南房総の里山の林道やロードを走り、古民家ゆうぎづかへ集まります。そして、夕食にはジビエBBQと地ビールの食事を楽しみ、棚田でキャンプするというイベントです。宿泊は棚田でソロテント、ウッドデッキのベルテント、古民家ゆうぎつかと選べ、そのためにこのベルテントを設置したのです。とても大成功したその時の話は、またの機会に・・・。

セブンジェネレーション

鴨川里山トラストの参加者は小さな子どもを持つファミリーが多く、キラキラと瞳が輝く子どもたちと一緒に輪になって、僕らは丸いベルテントの中に座りました。
ベルテントの中はアメリカ先住民のティピのように、円柱状でその包まれる感覚は不思議な一体感があり、魔法のように心が開き、僕らは深く語り合いました。

微生物のこと、土のこと、種のこと、食べること、いのちはつながっていることを。

自然と地球は美しく、一人ひとりの人生は素晴らしいことを。

すべての人がアーティストであり、デザイナーであることを。

そして、僕らは素晴らしい未来を創造することができることを。

鴨川里山トラストのお米づくりに通ってくれた子どもたちは、きっとその大切なメッセージを頭ではなく、心と身体で感じてくれたことでしょう。
アメリカ先住民には"セブンジェネレーション"、7世代先のことを考えて1本の木を切るということわざがあります。
7世代先もみんなが楽しく生きられる世界を未来へ残せるように、これからも「いのちのバトン」を多くの人たちと一緒につないでいきたいと思います。

Photo by Yasuaki Inoue・Yoshiki Hayashi

イベント情報

「手づくり味噌・醤油の会」(NPOうず主催・無印良品協力)第3回「大豆収穫」

「手づくり味噌・醤油の会」では、地大豆の種蒔きから始め、有機栽培した大豆を収穫、脱穀・選別、年明けに味噌を仕込みます。
また、その有機大豆を使って釜沼産の有機小麦と天日塩で1年間もろみを発酵させ、麦醤油と米醤油の2種類の醤油をしぼります。
第3回は、「大豆収穫」をおこないます。

開催日:2018年12月1日(土)
開催時間:11:00~15:30(予定)
開催場所:千葉県鴨川市
詳しくはこちら

「鴨川里山トラスト」の2018年度スケジュール
有機米の会

2018年5月19日(土)第1回「田植え」
2018年6月9日(土)第2回「田の草取りとごはん茶碗づくり」
2018年7月7日(土)第3回「田の草取りとすがい縄づくり」
2018年9月8日(土)第4回「稲刈り」
2018年10月13日(土)第5回「収穫祭」
2018年12月22日(土)第6回「注連縄づくりとみかん狩り」

手づくり味噌・醤油の会

(年会費(3,000円):味噌1kg、麦醤油500ml、米醤油500ml)

2018年7月21日(土)第1回「大豆種まき」
2018年8月18日(土)第2回「大豆畑の草刈り」
2018年12月1日(土)第3回「大豆収穫」
2019年1月19日(土)第4回「大豆脱穀・選別」
2019年2月16日(土)第5回「味噌仕込み」
2019年3月16日(土)第6回「醤油しぼり

自然酒の会

(年会費(10,000円):720ml×4本)

2018年5月26日(土)第1回「田植え」
2018年6月16日(土)第2回「田の草取りとすがい縄づくり」
2018年7月14日(土)第3回「田の草取りとぐい呑みづくり」
2018年9月15日(土)第4回「稲刈り」
2018年11月17日(土)第5回「収穫祭」
2019年1月26日(土)第6回「寺田本家蔵見学」

※天候不良などによる予備日はすべてありません。

  • プロフィール 林良樹
    千葉・鴨川の里山に暮らし、「美しい村が美しい地球を創る」をテーマに、釜沼北棚田オーナー制、無印良品 鴨川里山トラスト、釜沼木炭生産組合、地域通貨あわマネーなど、人と自然、都会と田舎をつなぐ多様な活動を行っています。
    NPO法人うず 理事長
    T&T研究所 研究員

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