各国・各地で「千葉・鴨川 ─里山という「いのちの彫刻」─」
棚田の村へ入ると、まるで時計の針を戻していくように過去へとタイムトラベルしていきます。しかし、ここでの暮らしから見えるのは、過去を突き抜けた「未来の風景」です。

多様性のある里山コミュニティ

2018年08月15日

7月21日土曜日は、「鴨川里山トラスト」手づくり味噌・醤油の会の地大豆の種まきを行いました。今年は猛暑が続き、こんなに暑い夏は始めてです。
この炎天下での農作業は熱中症になる可能性があるので、日陰をつくるためタープを張り、冷たい麦茶を用意して、無理せずちょくちょく休むようにしました。

里山では森から吹き抜ける風に救われますが、都会はコンクリートのビル、アスファルト、エアコンの室外機、車の排ガスなどによりさらに気温が上がり、体感温度は40度を超えると思われます。

異常気象により世界中で猛暑、豪雨、洪水、土砂崩れ等々、自然災害が多発し、温暖化の影響を肌で感じています。
政治、経済、文化、教育、ライフスタイルあらゆる分野で、本当に今の社会システムを変えていかないと、僕たち人間も地球も持たないでしょう。

「答え」のない授業

今回の種まきには千葉大学国際教養学部の学生が13名も参加してくれたので、無事に植え終えることが出来ました。

種まき後は、醤油の天地返しを行いました。醤油の天地返しとは、今年の3月に仕込んだ麦と米の2種類のもろみを、樽に移し替えて良く混ぜ合わせることです。古民家の土間に置いてある樽の蓋を開けると、美味しいそうな醤油の香りが漂います。わぁ~っと子供たちは集まり、夢中になって天地返しをしてくれました。
来年の醤油絞りには、美味しく熟成しますように。

種まきイベント終了後、学生たちと空き家見学へ行きました。この空き家の屋号は「梅本」と言い、かつては料理屋だったそうです。
「梅本」の周りには、地域唯一のスーパー「寿しや」、散髪屋、交番、郵便局、消防署、旧大山小をリノベーションした里山オフィスと大山公民館があり、大山地区のメインストリートの中心に位置しています。

大家さんは先月お話しを伺った大山不動尊の総代長である小川さんです。
今ではすっかり寂れて過疎地域となってしまいましたが、かつて1950年代はこのエリアには料理旅館が並び、市町村合併する前の大山村の村役場もここにあり、とても賑やかな場所だったそうです。
その当時行われた小川さんの結婚式は村で初めて車での花嫁行列で、街道には人々がズラリと並び、村人総出で祝福してくれたそうです。また、結婚式は自宅で行われ、「祝い船」というわら細工を持って新郎新婦の顔を見に来た村人たちにご馳走を振る舞い、なんとそれは2日間も続いたそうです。
当時の話を聴くと、まるで映画のように賑やかだった頃の農村風景が見えて来るようでした。

この空き家を使って、学生たちと何ができるだろうか?
実際に何ができるかわかりませんが、これからみんなでアイデアを出し合います。
この授業には「答え」は無く、一人ひとりが考えて、そして現場で行動し、「答え」を創るのです。

夕食は恒例のウッドデッキでのバーベキューです。
バーベキューには新聞記者やIT企業に務める僕の友人たちも合流し、仕事のこと、就職のこと、地域づくりのこと、空き家のこと、恋のこと、人生のこと等々、夜空の下で楽しく語り合いました。みんな社会人の先輩の話を熱心に聞いていました。

年々厳しい共同作業

翌日は、釜沼北集落の共同作業である草刈りを学生たちに参加してもらいました。
釜沼北集落では、田植え後の5月、夏祭り前の7月、そして稲刈り後の10月に、1年に3回草刈りを共同で行っています。

午前中は集落の山側全体に設置された防護柵周りの草刈り、午後からは集落の道草刈りです。
農村の美しい景観が保たれているのは、こうやって地域住民が日々田畑を管理し、草刈りなどの共同作業を続けることで維持されています。

しかし高齢化が進み、参加者が減り続けてマンパワー不足となり、年々草刈りが厳しくなってきています。このままでは、共同作業を継続するのは難しいでしょう。
だからこそ学生たちが農村へ通い、手伝ってくれることは本当にありがたく、それは大きな力となっています。

多様性の大きな輪

草刈り終了後は、里山デザインファクトリーで開かれているコミュニティカフェ&マーケットawanovaへ学生たちと行きました。里山デザインファクトリーとは、鴨川へ移住したITエンジニアやパーマカルチャリストの外国人移住者たちのグループ「ハッカーファーム」のメンバーが中心となって運営しているコミュニティスペースです。
里山デザインファクトリーでは、料理家の米山美穂さんと佐久間康栄さんが主催するawanovaが毎月新月に開かれ、主に移住者の半農半Xたちが中心となって手づくりで運営しているコミュニティカフェ&マーケットです。
今年で9年目を迎えるawanovaには、半農半Xたちがそれぞれの「X」を持ち寄って小商いを行い、また地域通貨あわマネーの社交場のようにもなり、コミュニティの顔の見える信頼関係を深める場となっています。

丁度、この日はawanova、里山デザインファクトリー、コヅカ・アートフェスの3団体の共催で夕方から盆踊り祭りも開催されました。
ラテン、サンバ、ロック、ファンク、レゲエ、ジャズ、民謡など多様な音楽をMIXさせたグルーブ感のある新しい盆踊りを生バンドで演奏する「イマジン盆踊り部」を鎌倉から3年前に招いたのが始まりで、昨年から里山デザインファクトリーを運営するアメリカ人の友人クリスもサックス奏者としてメンバーに加わり、この盆踊り祭りを大いに盛り上げています。

そして、この盆踊りに触発され、なんと途絶えていたこの地域の「大山音頭」も50年ぶりに復活したのです。大山地区でかつて踊られていた盆踊りが録音されたカセットテープが発見され、その踊りを憶えているご婦人を先生に毎月大山公民館で練習し、この日はその成果を会場で披露してくれました。

盆踊り会場の里山デザインファクトリーの広場には多様な人がつながり、笑顔があふれ、大きな輪が生まれました。
盆踊り終了後、主催者のクリスは感動のあまり涙を流してお礼の挨拶をしました。
アメリカから鴨川の農村へ移住した彼にとって、その光景は"未来の日本の姿"に映ったのかもしれません。

地元の人、移住者、外国人、大学、企業、都市住民と多くの人が集まる鴨川の里山は、「多様性のあるコミュニティ」に発酵してきました。

気候変動が日常となり、人口減少していく社会において「多様性のあるコミュニティ」は、豊かさとレジリエンス(弾力・回復力・復元力)をもたらし、新しい地域を創造する力になるでしょう。

Photo by Yoshiki Hayashi

イベント情報

天水棚田でつくる「有機米の会」(NPOうず・無印良品共催)第4回「稲刈り」

「有機米の会」第4回は、いよいよ「稲刈り」です。
刈り取った稲は、以前つくった「すがい縄」でくくり、「はざかけ」という竹を組んだ伝統的な天日干しを行います。

開催日:2018年9月8日(土)
開催時間:11:00~15:30(予定)
開催場所:千葉県鴨川市
詳しくはこちら

天水棚田でつくる「自然酒の会」(NPOうず主催・無印良品協力)第4回イベント「稲刈り」

「自然酒の会」第4回は、いよいよ「稲刈り」です。
刈り取った稲は、以前つくった「すがい縄」でくくり、「はざかけ」という竹を組んだ伝統的な天日干しを行います。

開催日:2018年9月15日(土)
開催時間:11:00~15:30(予定)
開催場所:千葉県鴨川市
詳しくはこちら

「鴨川里山トラスト」今後のスケジュール
有機米の会

2018年5月19日(土)第1回「田植え」
2018年6月9日(土)第2回「田の草取りとごはん茶碗づくり」
2018年7月7日(土)第3回「田の草取りとすがい縄づくり」
2018年9月8日(土)第4回「稲刈り」
2018年10月13日(土)第5回「収穫祭」
2018年12月22日(土)第6回「注連縄づくりとみかん狩り」

手づくり味噌・醤油の会

(年会費(3,000円):味噌1kg、麦醤油500ml、米醤油500ml)

2018年7月21日(土)第1回「大豆種まき」
2018年8月18日(土)第2回「大豆畑の草刈り」
2018年12月1日(土)第3回「大豆収穫」
2019年1月19日(土)第4回「大豆脱穀・選別」
2019年2月16日(土)第5回「味噌仕込み」
2019年3月16日(土)第6回「醤油しぼり

自然酒の会

(年会費(10,000円):720ml×4本)

2018年5月26日(土)第1回「田植え」
2018年6月16日(土)第2回「田の草取りとすがい縄づくり」
2018年7月14日(土)第3回「田の草取りとぐい呑みづくり」
2018年9月15日(土)第4回「稲刈り」
2018年11月17日(土)第5回「収穫祭」
2019年1月26日(土)第6回「寺田本家蔵見学」

※天候不良などによる予備日はすべてありません。

  • プロフィール 林良樹
    千葉・鴨川の里山に暮らし、「美しい村が美しい地球を創る」をテーマに、釜沼北棚田オーナー制、無印良品 鴨川里山トラスト、釜沼木炭生産組合、地域通貨あわマネーなど、人と自然、都会と田舎をつなぐ多様な活動を行っています。
    NPO法人うず 理事長
    T&T研究所 研究員

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