各国・各地で「千葉・鴨川 ─里山という「いのちの彫刻」─」
棚田の村へ入ると、まるで時計の針を戻していくように過去へとタイムトラベルしていきます。しかし、ここでの暮らしから見えるのは、過去を突き抜けた「未来の風景」です。

Local is beautiful! ~すべての人はアーティスト~

2017年11月22日

9月9日土曜日に、無印良品 鴨川里山トラスト・天水棚田でつくる「有機米の会」の収穫祭を開催しました。秋の長雨が続くなか、ありがたいことにこの日は雨が降らず、収穫祭はまさに"晴れの日"となりました。
当日は、いつも応援してくれる長老たちも一升瓶を抱えて、お祝いに駆けつけてくれました。
そして、安房に暮らす最高の仲間たちが収穫祭を盛り上げてくれます。

ランチの料理は里山里海の創作和食「こころ」の木村夫妻です。

食後のデザートを提供してくれるのは「藁珈琲洞」の生田夫妻と「るんた」の米山美穂さんのおやつユニット「AWAコロボックルズ」!

出店は今年から無印良品のネット販売「諸国良品」で農産物加工品の販売をはじめているマリポ農園の古木さんたちです。

みんな、この里山里海の食材を最大限に活かした素晴らしいスローフードを表現しているアーティストです。
収穫祭で僕はこの一年間、お米づくりに通ってくれたみなさんに感謝の気持ちを伝え、一緒に天水棚田で育てた無農薬無化学肥料・天日干し・長狭米の新米をお渡ししました。

こうやって都会から通ってくれる人たちがいるからこそ、この1200年前からつくられてきたと伝えられている天水棚田が存続しているのです。

これは、集落にとって本当にありがたいことです。
しかし、それは集落だけではありません。地球規模の気候変動や食糧危機、自給率の低下と農家の高齢化が進む現代社会において、大変意義あることだと思っています。

生きがい

その後、僕は釜沼集落の長老3人と一緒にトークしました。
「これからここは、どんどん田んぼをやる人がいなくなっちゃうよ。そんな年寄りしかいない集落に都会から来た子どもたちの笑い声が響くのは、俺たちにとって嬉しいことなんだ。でもそれは、子どもたちにとっても良い教育になっていると思うよ。そして、若いみなさんと一緒にお米づくりをすることで、俺たちは逆に元気をもらっているんだ。だから、俺たちの方こそお礼を言いたいくらいだよ。今では、それが俺たちの"生きがい"にもなっているんだ。」

ある日の夜、長老のごいちさんから電話がありました。
「林くん明日、ひとりで脱穀をするんだってな。遠慮しないで俺たちに手伝ってくれって、電話をしろよ。君は毎年、棚田が増えているから、手がまわらないのは知っているよ。あんまりひとりで抱え込むなよ。80過ぎの爺様でも、猫の手くらいにはなるからよ。」
そして翌日、長老は猫の手どころじゃなく、僕の脱穀作業をガンガン手伝ってくれたのです。
長老たちのように僕も85才になっても、"生きがい"を持って暮らしたいと思います。
長老たちを見ていると、それがいつまでも"しあわせに生きる秘訣"なのだと思うからです。

しあわせの経済

昼食には昨年、釜沼北集落のお米を地元の亀田酒造で仕込み、無印良品の店舗で販売した純米酒「日本酒」で乾杯をしました。

そして、里山里海の食材を上手に使った木村夫妻のおいしい料理とAWAコロボックルズの食べるのがもったいないくらい可愛いおやつプレートをいただき、お腹いっぱいになりました。

食後は棚田のウッドデッキで半農半翻訳者の吉田奈緒子さんが演奏するコンサーティーナとまっちゃんのアコースティックギターのアイリッシュ音楽のコンサートを行いました。

吉田奈緒子さんは翻訳したばかりの書籍「無銭経済宣言」(マーク・ボイル 著/吉田奈緒子 訳/紀伊國屋書店)を紹介してくれました。
アイルランドの青年マーク・ボイルは、100%金無し生活を実践したレポート「ぼくはお金を使わずに生きることにした」の衝撃的なデビュー作を世に送り、持続可能な地球を取り戻すことを目指し、貨幣経済から脱却したフリーエコノミー運動の創始者で、「無銭経済宣言」は彼の待望の第2作です。
行き詰まった資本主義社会から次の時代へ向かう動きは、世界各地で起こっています。

先日、11月11日土曜日から12日日曜日にかけて2日間に渡り、東京で「しあわせの経済」世界フォーラムが開催されました。実行委員長は、名著「ラダックー懐かしい未来(Ancient Futures)」の著者であり、ドキュメント映画「幸せの経済学」の監督でもあるローカリゼーション運動の世界的リーダーの言語学者ヘレナ・ノーバーグ・ホッジさんと文化人類学者の辻信一さんです。
強大化したグローバル経済は人間のみならず地球上の全生命の存在を脅かし、人間同士の分断、自然破壊、精神の崩壊、格差と貧困、民主主義の喪失、暴力的衝突を生み出しています。しかし、それに代わる代替案がローカリゼーションです。
「ローカル化とは、人と人、人と地域社会、そして、人とそれを取り巻く自然との"つながり"を再生させること。だからそれは、私たちが見失ってきた"生きる目的"や"所属の意識"、そして自分たちとその子どもたちのための"安心な未来"を再発見することを意味する」
「ローカリゼーションは過去に戻ることではない。しかし、昔の文化のよいところを認めるのは大切なことだ。人々の物質的ニーズを満たすために、地域の資源と知恵を活用し、結果として、自然環境への負担を最低限に抑えること。そして、コミュニティ内の相互関係に重きを置くことで、"つながり""安全""安心"といった、人間にとって最も重要な精神的なニーズを満たすこと。現代世界の危機に対する答えを求める私たちは、過去からのこうした学びを肝に銘じなければならない。」
(「ローカル・フューチャー "しあわせの経済"の時代が来た」ヘレナ・ノーバーグ・ホッジ著/ナマケモノブックス)
僕も分科会で、ダウンシフターズの高坂勝さんとトークするために参加してきました。
世界中から、そして日本中からローカリゼーション運動のリーダーや実践者が集い、語り合い、とても有意義な意見交換をしました。
それぞれのローカルで実践されている報告に、愛と希望を受け取りました。
来場者は延べ人数で1000人以上の人が集まっていたのではないだろうか、中でも若者たちが多かったのが印象的です。

すべての人がアーティスト

いつも僕に勇気を与えてくれる思想家であり現代エコロジーの巨匠、サティシュ・クマールさんの力強いメッセージは本当に素晴らしく、彼の言葉はまるで心からほとばしる音楽のようでした。
「想像力と創造性を発揮する人をアーティストと言います。
グローバル経済は私達を消費者にしてしまいました。
ローカル経済は、あなたを詩人に、作り手に、アーティストにします。
今日、この会議が終わったら、みなさん自分に向かって宣言してください。
私は作り手であり、詩人であり、アーティストである、と。
アート、美、芸術は今ハイジャックされていて、美術館やホール、特別な場所に連れて行かれています。でもアートは一部のエリートのものではありません。
"アーティストは特別な人のことではなく、すべての人が特別なアーティストなのです。"
何が私をアーティストにするのか?
想像力と創造性です。
どこに想像力や創造性があるのか?
それは一人一人の内に備わっています。
しかし内なる創造性、想像力はグローバル経済によって抑圧されてきました。
一部のエリートと巨大企業、グローバル経済から内なるアーティストを解放しましょう。
まず自分のために、家族のために、友人の為に、何かを作りましょう。
それでも余ったら、それを売ったらどうでしょう。
ローカル経済は、新しい経済です。一人一人が種をまき育てるのです。
自分の食べるもの、着ているもの、使うものを、知っている人が作ったものにしよう。
そうすることで"つながりをとりもどす"ことができます。」

現代は地球規模の危機を迎えていますが、確実に新しい世界がローカルから芽生えています。

僕ら一人ひとりがアーティストであることを宣言しましょう。
分断された社会から"つながり"を取り戻しましょう。
そして、今、生きていることを祝福しましょう。

これからが、「本当の豊かさ」を実現する出発点です。

鴨川里山トラストは、その担い手になりたいと思っています。
Local is beautiful!

Photo by Shouichi Nakamura

イベント情報

「手づくり味噌・醤油の会」(NPOうず主催・無印良品協力)第2回「大豆収穫」

「手づくり味噌・醤油の会」では、地大豆の種蒔きから始め、有機栽培した大豆を収穫、脱穀・選別、年明けに味噌を仕込みます。
今回は、「大豆収穫」です。

開催日:2017年12月16日(土)
開催時間:10:30~15:30(予定)
開催場所:千葉県鴨川市
詳しくはこちら

鴨川里山トラスト・有機米の会」第6回イベント「注連縄(しめなわ)飾りづくりとみかん狩り

「有機米の会」では1年の締めくくりとして、稲作を中心とする日本の伝統的な手仕事の注連縄(しめなわ)飾りをつくります。

開催日:2017年12月23日(土)
開催時間:10:30~15:30(予定)
開催場所:千葉県鴨川市
詳しくはこちら

2017年度「鴨川里山トラスト」スケジュール
有機米の会

2017年5月13日(土)第1回「田植え」
2017年6月10日(土)第2回「田の草取り」
2017年7月8日(土)第3回「田の草取りとすがい縄づくり」
2017年9月9日(土)第4回「稲刈り」
2017年10月14日(土)第5回「収穫祭」
2017年12月23日(土)第6回「注連縄づくりとみかん狩り」

手づくり味噌・醤油の会

(年会費:3,000円:できあがった味噌1kg、麦醤油500ml、米醤油500mlをお渡し)

2017年7月22日(土)第1回「大豆種まき」
2017年12月16日(土)第2回「大豆収穫」
2018年1月20日(土)第3回「大豆脱穀・選別」
2018年2月17日(土)第4回「味噌仕込み」
2018年3月17日(土)第5回「醤油しぼり」

自然酒の会

(年会費:10.000円:できあがった自然酒720mlX4本をお渡し)

2017年5月20日(土)第1回「田植え」
2017年6月17日(土)第2回「田の草取りとすがい縄づくり」
2017年7月15日(土)第3回「田の草取り・陶芸体験」
2017年9月16日(土)第4回「稲刈り」
2017年11月18日(土)第5回「収穫祭」
2018年2月4日(日)第6回「寺田本家蔵見学」

※天候不良などによる予備日はすべてありません。

  • プロフィール 林良樹
    千葉・鴨川の里山に暮らし、「美しい村が美しい地球を創る」をテーマに、釜沼北棚田オーナー制、無印良品 鴨川里山トラスト、釜沼木炭生産組合、地域通貨あわマネーなど、人と自然、都会と田舎をつなぐ多様な活動を行っています。
    NPO法人うず 理事長
    T&T研究所 研究員

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