各国・各地で「千葉・鴨川 ─里山という「いのちの彫刻」─」
棚田の村へ入ると、まるで時計の針を戻していくように過去へとタイムトラベルしていきます。しかし、ここでの暮らしから見えるのは、過去を突き抜けた「未来の風景」です。

「ヒュッゲ(Hygge)」な一日 ~「自然酒の会」寺田本家蔵見学~

2018年02月14日

2月4日日曜日、天水棚田でつくる「自然酒の会」最終回は寺田本家蔵見学へ行ってきました。
会員のみなさんと一緒に、天水棚田で育てたお米を自然酒「天水棚田」に仕込んでくれた蔵元寺田本家は、千葉県最北部の利根川沿いの米どころ神崎町にあります。

今年で「自然酒の会」も3年目となり、寺田本家蔵見学へは毎年訪れていますが、僕はここに来るたびに新しい発見と感動があります。

寺田本家へ到着すると24代目当主の寺田優さんが、いつもの様にニコヤカに迎えてくれました。
酒、味噌、醤油、納豆、チーズ等々、発酵の仕事にたずさわる人は、共通の柔らかいオーラを感じます。菌と共に生きている人は、性格がまろやかなに醸され、人格まで発酵している感じがするのです。さらに、寺田本家では先代の寺田啓佐さんのフィロソフィー「発酵道」が受け継がれ、お酒造りが生きる「道」となっています。

海を超える伝統

優さんと一緒に僕の前に現れたのは、デンマークから来ている若い男性ヘンリーでした。
世界のベストレストラン・ランクの上位5位内に常に入るデンマークを代表するレストラン「ノーマ(noma)」でソムリエとして働いていた彼は、日本へ来て日本酒や日本食を学び、帰国後は本物の日本食を提供するレストランをコペンハーゲンにオープンさせたいそうです。

「ノーマ、世界を変える料理」というドキュメンタリー映画にもなった伝説の料理人である「ノーマ」のメインシェフのレネ・レゼピは、ユニークな食材を用いて斬新で芸術的な料理を創り出すことで知られています。そして、レストラン「ノーマ」では発酵ラボを持っており、様々な発酵食品を研究しているそうです。
そんな世界最高峰のレストランに寺田本家の自然酒は選ばれ、「ノーマ」の料理と共にコペンハーゲンでも親しまれています。 日本の伝統が海を超え、食を通して革新と融合し、新しい食文化を開花させています。

100年後も持続可能な里山資本主義

酒蔵の大きなもろみ樽を除くと、プクプク、シュワシュワと発酵している音が聞こえます。
あ~、生きているんだ。
目には見えない菌も僕らと同じように「いのち」なのです。
優さんに案内され蔵の中を見学していると、この蔵にいる菌たちと僕たち人間も今一緒に生きているのだと思い、生命の一体感が湧いてきます。

そして、発酵中のプクプクした自然酒を試飲させていただくと、シュワっとフレッシュで濃厚な旨味が口の中に広がります。
「うわ~、おいしい~!」

オーガニックでお米を育て、蔵人たちが仕事唄を歌いながら丁寧に醸し、添加物を使わず微生物だけの力で発酵させてつくった自然酒は、地域の自然環境と人々の健康を守り、伝統文化を継承し、地域経済を循環させ、人も地域もしあわせにします。
それは、100年後も持続可能な里山資本主義です。

「しあわせ」をデザインする

酒蔵見学を終えると蔵を改築した素敵な部屋で、寺田本家の全種類の自然酒を試飲しながら、一品持ち寄りの昼食会を楽しみました。

丁度、今回の蔵見学には昨年のデンマークツアーに参加した「自然酒の会」のメンバーが3名もいたので、ヘンリーと共にデンマーク話に花が咲きました。
「発酵」「地域」「棚田保全」「都会と田舎」「参加型」「自然酒」「デンマーク」「日本」「オーガニック」「農」「食文化」「伝統」「自然エネルギー」「成熟社会」「デザイン」等々、会話の中に出てきたキーワードを結んでいくと、超高齢化と人口減少を迎える日本社会がこれから向かう方向性が見えてくるような気がしました。

デンマーク国民の幸福度が高いのは、一人ひとりの「しあわせ」を国家レベルでデザインしてきたからだと思うのです。
そんなデンマークでは、「ヒュッゲ(Hygge)」という価値観を大切にしています。
「ヒュッゲ」とは、部屋で家族や友人たちとの語らいであったり、日常のささやかな喜びや豊かさ、美しさを感じる瞬間であったり、居心地の良い時間や空間を意味します。

モノからコトへ、成長から成熟へ、「豊かさの価値観」が変わりつつある時代において、「ヒュッゲ」は今、世界中の人から注目されています。
おいしい自然酒とみんなの手づくり料理に舌鼓を打ち、そして居心地の良い部屋での会話を楽しんでいると、優さんは笑いながらこう言いました。
「今日はヒュッゲだね。」
寺田本家蔵見学は、まさに「ヒュッゲ」な一日でした。

Photo by Yoshiki Hayashi

イベント情報

「手づくり味噌・醤油の会」(NPOうず主催・無印良品協力)第4回「味噌仕込み」」

第4回は、「味噌仕込み」をおこないます。

開催日:2018年2月17日(土)
開催時間:10:30~15:30(予定)
開催場所:千葉県鴨川市
詳しくはこちら

「鴨川里山トラスト」スケジュール
有機米の会

2017年5月13日(土)第1回「田植え」
2017年6月10日(土)第2回「田の草取り」
2017年7月8日(土)第3回「田の草取りとすがい縄づくり」
2017年9月9日(土)第4回「稲刈り」
2017年10月14日(土)第5回「収穫祭」
2017年12月23日(土)第6回「注連縄づくりとみかん狩り」

手づくり味噌・醤油の会

(年会費:3,000円:できあがった味噌1kg、麦醤油500ml、米醤油500mlをお渡し)

2017年7月22日(土)第1回「大豆種まき」
2017年12月16日(土)第2回「大豆収穫」
2018年1月20日(土)第3回「大豆脱穀・選別」
2018年2月17日(土)第4回「味噌仕込み」
2018年3月17日(土)第5回「醤油しぼり」

自然酒の会

(年会費:10.000円:できあがった自然酒720mlX4本をお渡し)

2017年5月20日(土)第1回「田植え」
2017年6月17日(土)第2回「田の草取りとすがい縄づくり」
2017年7月15日(土)第3回「田の草取り・陶芸体験」
2017年9月16日(土)第4回「稲刈り」
2017年11月18日(土)第5回「収穫祭」
2018年2月4日(日)第6回「寺田本家蔵見学」

※天候不良などによる予備日はすべてありません。

  • プロフィール 林良樹
    千葉・鴨川の里山に暮らし、「美しい村が美しい地球を創る」をテーマに、釜沼北棚田オーナー制、無印良品 鴨川里山トラスト、釜沼木炭生産組合、地域通貨あわマネーなど、人と自然、都会と田舎をつなぐ多様な活動を行っています。
    NPO法人うず 理事長
    T&T研究所 研究員

最新の記事一覧