各国・各地で 自転車世界1周Found紀行

地図に映る未来

2013年10月23日

小さい頃から地図が好きでした。
理由は分かりませんが、地図を眺めていると何か希望にも似た
無限の広がりを感じながら眺めていたことは覚えています。

ロンドンから飛行機に乗り赤道直下のウガンダへ。
再びアフリカ大陸へと帰ってきました。

帰ってきたと言っても、
前回は大陸の隅っこのモロッコを訪ねただけなので
いわゆるブラックアフリカは初。
本物のアフリカの旅がついに始まるのです。
ここから半年ほどかけて南アフリカの希望峰を目指します。

ウガンダに来て、まずはじめにしたことといえば地図の調達です。
ここに限らず地図の調達は新しい土地にやってきた時の第一行動。
ただ、それまで何もノープランでその場所にやってきているわけではありません。
今どき、インターネットの地図は紙の地図を遥かに凌ぐ
精度と最新さを備え、旅に必要な情報を提供してくれます。

けれど僕の場合、紙の地図がないとどうも落ち着かないのです。
ピンポイントで詳細な情報を与えてくれるオンラインの地図ですが、
逆に言えば、狙った場所の情報しか与えてくれません。
土地と土地の繋がりを断片的にしか感じることが出来ない、そんな気がします。

紙の地図を広げると、もともと行く予定のない場所も
意図する、しないに関わらず目に入ってきます。
もし不意に飛び込んできたその土地に何か面白さを感じれば、
目的地を変更してそこに向かえばいいのです。
旅とは本来自由なものなのですから。

そうそう、今いるウガンダの首都の隣町はジンジャって名前です。
さらにその隣はトロロといって日本人からすればなんだか面白そうな名前の街。
ナイル川の起源と言われるジンジャはともかく、
トロロは恐らくこれといって何があるわけでもない街でしょう。
けれど、そんなちょっとだけ面白そうという理由でその街を覗きに行くことも、
地図が与えてくれる旅のスタイルの一つです。
そして、そんな何もないところにこそ、
その国の何気ない暮らしの根本が詰まっているような気がします。

そんな風に紙の地図はページや折り筋の向こう側にも土地の繋がりを感じながら、
世界を捉えることが出来る気がします。

地図は様々な想像力を僕達に与えてくれます。

次の目的地を目指す時、僕は地図を眺めながら、距離や地形、気候などを調べ、
そこへ何日かけていくのか、食料をどれだけ準備していくのかなど
地図から得る情報とこれまでの旅の経験を組み合わせて走行計画を練ります。
休憩の仕方や走行速度、荷物の重さなど人それぞれですから、
地図を眺めてつくり上げる旅のしおりは、自分だけのもの。

これってちょっとロールプレイングゲームにも似ていますね。
悪の魔王(目的地)を倒すため(到着)、
修行(旅の経験)を重ね、新しい武器(食料)を手に入れ進んでいく。
新しい土地で地図を入手し、街の人から情報を集めて
次のステージへと進むヒントを手に入れる。
まさに自転車旅はリアルロールプレイングゲームのようです。

世界地図、大陸地図、国地図、州地図、町内図あるいは
バスや地下鉄の路線図に至るまで
実に様々な種類の地図が世の中には溢れています。

縮尺も絵柄もバラバラなのに、地図を片手にその土地々々の言葉で
「ここはどこですか?」と尋ねれば、途端にこの広大な地球において
自分の現在地を寸分違わず確認することが出来ます。
地図とはなんとも言えない強い力を持っています。

原研哉氏の著書「デザインのデザイン」の一節で記憶に残る仮説がありました。
それは高野孟氏の「世界地図の読み方」を参照した上で、
どんな風に日本は古来より海外のモノや文化を
自国に取り入れてきたのかについての言及です。
地図を広げ、ユーラシア大陸を90°傾けて
かつての文化の発信地ローマを上部に、日本を底辺に見立ててみると、
それはあたかもパチンコ台のようで、
パチンコ玉が色んな場所を飛び跳ねながら
受け皿を目指して転がっていくように、
世界中の文物があらゆるルートを経つつも、
日本という受け皿目指して収斂されてゆく。
日本は世界の影響を受け止め続け、そして止揚してきた。
そんな仮説です。

もちろん、これは確固たる根拠がある発想ではないのですが
試しに地図を傾けて見てみると、
なるほど、もしかしてそうだったのかもと
思わず納得してしまいそうな、実に不思議な力を地図は秘めています。

そんな不思議な力を持つ地図をじっと見つめて、
自らの現在地を確認し、目的地を定める。
さすれば、自ずとその道程が立体的に見えてくることでしょう。

未来を覗くことなど出来ないなんて誰が言ったのでしょうか。
地図は確実に未来の自分の姿をその紙面に投影することが出来るのです。
アフリカ地図を見れば喜望峰に辿り着く自分を、
世界地図を見れば日本に無事帰る自分を。

地図は摩訶不思議なタイムマシンなのでした。

  • プロフィール 元無印良品の店舗スタッフ

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