研究テーマ

松江高専での歩行評価①

6 松江高専での歩行評価①

前回やっと出来上がった開発品のサンプル。
これを使って「疲れにくい」「歩行しやすい」が現行品と比べてどのくらい実現できているのか、実際に履いて歩いてみて、疲れに関わる足の変化とそのときに感じる感覚を評価することにしました。

人の身体を使って行なう評価は、被験者への制約条件が多く負担も大きいため、被験者になってくださる方を集めるのに苦労します。その上、靴はサイズが合う方を見つけなくてはならないのでさらに大変で、私たちも頭を悩ませていました。
そんな時に齋藤先生から、松江高専の学生さんに被験者を募っていただけるというお話をいただき、松江高専で学生さんに被験者になっていただき、歩行評価を行なうことになりました。
学生さんには、夏休みを利用してご協力いただきました。

  • 実施日: 2012年8月8日~10日(10日は女子学生さんのみ)
  • 被験者: 松江工業高専の学生さん 男女各10名

歩行評価は、現行品と開発品の比較で行ないます。女性は3種類、男性は2種類の比較です。

  A B C
女性
(3種類)
現行品
綿洗いざらしスニーカー
開発品
綿洗いざらしスニーカー
開発品
綿スニーカー
男性
(2種類)
現行品
綿スニーカー
開発品
綿スニーカー

女性は3日間、男性は2日間、同じ時間に集まっていただき、まずは歩行前の足の計測を行います。
そのあと、校内で歩行運動を20分間×3セット(途中で水分補給のための休憩を5分×2回あり)合計60分間行い、終了後に再度足の計測を行います。
また、終了後には履いたときの感覚(主観評価)もアンケート形式で質問に答えていただきました。

1日のスケジュール

評価は以下の4項目について行ないました。
このうち1.~3.の項目は歩行の前と後で計測し、変化の度合いを調べて比較します。
4.は歩行後にアンケート形式に答えてもらい、評価を比較します。

評価項目 方法 箇所 計測タイミング
1.筋硬度 筋硬度計 前脛骨筋、腓腹筋、ヒラメ筋 歩行前後
2.足裏接地比率 足裏をスキャナーで読み取る(フットルック) 足裏、足幅、足長、母指角度 歩行前後
3 .周囲径・舟上骨高 メジャーハイトゲージ 下腿最大囲、足囲舟上骨高 歩行前後
4 .主観評価 アンケート 歩行後

計測の様子

  • 【事前準備】
    ○計測位置にマジックで印を付ける
    (松江高専 齋藤先生)
  • 1.筋硬度
    ○筋硬度計で筋硬度を計測
  • 2.足裏接地比率
    ○フットルックによる足裏画像スキャン
  • 3.周囲径・舟状骨高
    ○ハイトゲージで舟状骨高を計測
  • ○評価中の様子(運動解析室)

歩行の様子

【歩行運動】
○スニーカーを履き、松江高専校内を1時間歩行
※20分に1度、水分補給あり

○筋硬度と疲れの関係

筋肉は疲労すると、硬くなります。
歩行によって筋肉が疲労すると、足の筋肉が硬くなり、歩行前よりも筋硬度が高くなるため、足の疲労を見るためのひとつの指標になります。

今回は足関節の背屈(足の甲側に関節を曲げる)を担う前脛骨筋と足関節の底屈(足の底側に関節を曲げる)を担う腓腹筋とヒラメ筋の筋硬度を計測しました。これらの筋は歩行中の下腿の動きを制御することで下腿の安定性をもたらしたり、足底接地の衝撃を和らげたりする働きがあります。

筋硬度計(NEUTONE TDM-N1)

○足裏接地面積と疲れの関係

足裏は歩行などで疲れると内側の縦アーチ(土踏まず)がつぶれてきます。
この縦アーチがつぶれると地面に接地する面積(足裏接地面積)が増えるため、足裏接地面積が足の疲労を見るためのひとつの指標になります。

歩行の前後で足裏接地面積(右図の白い部分)の増加が少なければ、足の疲れが抑制されているということが出来ます。

○舟状骨高と疲れの関係

舟状骨とは、土踏まずの上、内くるぶしの下に出ている骨のことです。
歩行などで疲れると土踏まずが下がり、それにともない舟状骨の位置も下がります。ハイトゲージによって、この舟状骨の床からの高さを測ることは、足の疲労を見るためのひとつの指標となります。

歩行の前後で舟状骨高の低下が少なければ、足の疲れが抑制されているということが出来ます。

暑い中、3日間に渡った評価が終了しました。(ご協力いただきました松江高専の学生さんありがとうございました。)次回は評価結果についてご報告します。