研究テーマ

インソール・アウトソールの改良

4 インソール・アウトソールの改良

現行品の3ヶ月間のモニタリングを終えて、具体的な課題や改良のヒントが得られました。このヒントを参考にいよいよ改良設計の検討をはじめました。がしかし、ゼロからスニーカーを設計するためには、まずいくつかのプロセスを踏む必要がありました。

1.品揃えの検討

まず今回の改良に伴って、品揃えについて、メンバーで議論しました。

現行品の「綿スニーカー」のデザインの商品を、紳士サイズだけではなく婦人サイズに広げてつくることにチャレンジしようということになりました。

それに加えて、婦人の「綿洗いざらしスニーカー」はこの商品の良さを活かしながら、別に婦人用として設計しようということにしました。

2.ラスト(足型)の設計

  • 改良を始めるには、いきなりスニーカーの設計図を書くことはできません。まず基準となるラスト(足型)をつくることが必要です。そのラストに合わせてスニーカーを設計していきます。
  • ラスト(足型)の左足
  • まず基準となる1サイズを設定し、足長と足囲はJIS規格の寸法に則って、それ以外は甲の高さやかかとの形状など職人さんの経験から、細かい部分まで人の足を模して「足の設計図」を書きます。その設計どおりに型をおこし、樹脂を流し込んで完成させます。 このラストの作成は、職人さんの長年の経験と技術が必要で、それが各社の大切なノウハウなのだそう。今回は製造をお願いする取引先の方に作っていただきました。
  • 改良品のラストは現行品よりも足囲を少し大きくし(JIS規格のEサイズ)で設計し、アッパー(甲の部分)が少し高くなるようにつくりなおしました。これから行なうスニーカーの設計はすべてこのラストに合わせて行ないます。

3.インソールの設計

品揃えとラストを決め、やっとスニーカーの設計に入りました。
まず「歩きやすさ」や「疲れにくさ」に最も関係すると思われるインソールの設計について検討しました。
実は現行品の紳士の「綿スニーカー」と婦人の「綿洗いざらしスニーカー」はインソールの仕様が異なります。

現行品

  • 紳士の「綿スニーカー」は一体型のインソールです。
  • 婦人の「綿洗いざらしスニーカー」は取り外しが可能なカップインソールです。

一体型インソールだと汚れてもなかなか洗えなかったり、取替えが出来ないので、お客様の利便性を考えるとカップインソールのほうが良いのではないかということで、今回の設計は全てカップインソールに統一することにしました。

次に「歩きやすい」「疲れにくい」を実現するためにインソールがどうあるべきかを検討しました。
インソールによって「歩きやすく」「疲れにくい」機能を持たせるためには、人間の足や歩行のメカニズムを加味したものにする必要があります。
私たちだけで考えていても解決しないと思ったので、歩行の専門家である松江高専の齋藤先生に「歩きやすく」「疲れにくい」を実現できるインソールの設計をお願いしました。

齋藤先生から送られてきた図面は、より疲れにくくするために、土踏まず部分を凸型に盛り上げ、アーチをサポートすることができる設計になっていました。

そしてもう1つ、このインソールは「あおり歩行」と呼ばれる理想的かつ効率的な歩行を実現しやすくするための設計になっていました。

  • 理想的な歩行重心移動パターン;あおり歩行
    1)かかとのやや外側から着地し
    2)足の外側を通って小指の付け根付近まで前方に重心が移動
    3)小指の付け根付近から内側に向かって親指の付け根まで重心が移動
    4)親指の付け根で地面を蹴り出し
    5)体重が親指から抜けていく
  • あおり歩行

4.アウトソールの設計

アウトソールは「綿スニーカー」と「綿洗いざらしスニーカー」で別々の設計と意匠(デザイン)にしました。「綿スニーカー」はあおり歩行をサポートし、重心移動をスムーズにすることを重視した意匠に、「綿洗いざらしスニーカー」はもともとのやわらかい履き心地を損なわず、アウトソールのすり減りを軽減することを重視した意匠にしました。

綿スニーカー

綿洗いざらしスニーカー

この設計図に基づいて、いよいよサンプル作成に入ります。ここまでいろいろなプロセスを踏んで、どんなサンプルが出来上がってくるのか楽しみです。次回は出来上がったサンプルをご紹介します。