研究テーマ

使い勝手を考える ─大阪ミナミから─ 1.プロローグ

今回、社会福祉法人「あまーち」様が新たに建てられる施設に、無印良品の商品を納品する機会をいただきました。
「あまーち」様は兵庫県尼崎市にある生活介護事業所・居宅介護事業所です。
名刺やレターセットを作製する施設にはカフェも併設されていて、障害のある方々の社会参加や自立を支援する活動を行っています。
この活動報告では、まだ完成していない建物に合う家具を模索する過程と、その中で起こる(であろう)さまざまな出来事を、無印良品難波の副店長の目線で綴っていきます。

1.プロローグ

「尼崎に新しく建てる福祉施設に家具を入れたい。相談に乗ってもらえますか?」

今回の活動は今年6月末に掛かってきた1本の電話からスタートします。
社会福祉法人「あまーち」様の設計・監理を担当されている佐藤総合計画の砂川さんからの電話でした。

商談の当日は、「既にカタログや店舗で商品をご覧になっていて、数や納品日などのご相談だろう」と吞気に構えて、無印良品難波のインテリアアドバイザー橋尾と共に砂川さんのもとへ向かいました。

しかし、商談が始まった瞬間からこの気持ちは吹き飛びました。
建物の図面だけでなく、家具の図面も既に出来上がっていたからです。

「この家具の図面に合わせて、無印良品の商品を提案して欲しい。提案してもらった収納家具のサイズによって、建物の壁の厚みや位置などを変更します」

先方での打ち合わせ、使用した図面など

正直、びっくりしました。
なぜなら、無印良品で通常行っているインテリア相談会では、建物や部屋の広さや大きさは既に決まっています。無印良品の家具カタログから、そのお部屋などに置ける商品をお客様の好みに応じて色々な相談に乗りながらご提案していくことが多いからです。

ですが、今回は違いました。

設計段階から打合せすることで設置する収納などのサイズをしっかり決め、その上で、通常では変更することのできない壁や扉の位置を家具に合わせて微調整するというのです。

「今までの施設にありがちな『持ち寄ったものを置いただけ』ではなく、施設にぴったりと当てはまり、かつ、利用される方々が使いやすく、居心地の良い場所をつくりたい」

この一言には参りました。

無印良品がモノづくりの際に意識している「モジュールを合わせる」ことや、「感じ良い暮らしをリーズナブルに」といった考え方、美意識に通じる「設計者の感覚」に触れたからです。

私たち店舗で働くスタッフは、お客様の「顔が見える」「生の声が聞こえる」現場にいます。
しかしそれは、お買物が完結するまでのことが多く、実際にモノが「使われる場」での実感をつかみきれているかというと、そうではないかもしれません。
この仕事を通して、日常生活の中での「モノの有り様」を考え、本当に「よいモノ」づくりにつなげていければと思います。

次回は打ち合わせの様子などを報告していきます。

この活動に関わった方々
・社会福祉法人「あまーち」様 http://www18.ocn.ne.jp/~ama-chi/
・佐藤総合計画 http://www.axscom.co.jp/

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    7.エピローグ