研究テーマ

番外編 コットンスニーカーの有用性を論文として発表しました

13 番外編 コットンスニーカーの有用性を論文として発表しました

定番スニーカー見直しプロジェクトを通じて、改良したコットンスニーカーとフラットスニーカー。
2013年2月の発売以来、日本国内で50万足、海外で20万足を販売し、たくさんの方に「歩きやすく、疲れにくい」スニーカーを使っていただくことが出来ました。

このほど、このコットンスニーカーの歩きやすさ、疲れにくさの検証実験と結果データを学術論文にし、一般社団法人 日本繊維製品消費科学会の学会誌「繊維製品 消費科学」2015年3月号に発表致しました。

一般社団法人 日本繊維製品消費科学会

・・・繊維製品消費科学に関する研究の進歩と普及、学術の発展に寄与することを目的に1960年に設立されました。設立当初から繊維と人間、繊維と社会との関係の究明に重点を置いた特徴ある学会として発展してきています。
現在は大学や公的な研究機関の方をはじめ、繊維素材、繊維製品、繊維加工、洗剤、クリーニング、検査機関、商社など幅広い業種の会員が所属し、研究や論文の発表、情報交換や勉強の場として活動が行われています。

発表した論文は、「The Validity of Our New Sneakers Designed for More Comfort and Easy Walking(歩きやすさと疲れにくさを求めたスニーカーの有効性)」というタイトルの英語の学術論文です。
定番スニーカー見直しプロジェクトを通じて「疲れにくく、歩きやすい」のコンセプトでコットンスニーカーを改良するにあたって行った、3つの実験を論文としてまとめた内容です。
改良したコットンスニーカーと従来品を比較し、「疲れにくく、歩きやすい」という点での有用性を検証しています。

第1実験 足圧中心のばらつき

スニーカー改良プロジェクト「No.8;歩行安定性評価」の内容
プロジェクト「定番スニーカー見直し」 > 8 歩行安定性評価

第2実験 着用による筋硬度と足部形状の変化

スニーカー改良プロジェクト「No.10;第2回歩行評価」の内容
プロジェクト「定番スニーカー見直し」 > 10 第2回歩行評価 ─MUJI銀座松坂屋─

第3実験 ソールの衝撃緩衝性

  • 衝撃緩衝性については、これまでプロジェクトのページで紹介していなかったので、説明したいと思います。
    この実験は、歩行の時に脚を地面に着いたときの衝撃(着地衝撃)が、スニーカーによってどの程度異なるかを比較したものです。
    衝撃を和らげる効果のことを「衝撃緩衝性」と言います。
    衝撃緩衝性は、加速度計という装置を用いて「衝撃加速度(単位はG)」を測定し、比較をすることができます。

  • MEMSIC社 加速度計
    住友精密工業(株)HPより

衝撃加速度の値が大きい→地面からの跳ね返りの力が強い
→脚に加わる衝撃が大きい→疲れやすいと言えます。
反対に、
衝撃加速度の値が小さい→地面からの跳ね返りの力が弱い
→脚に加わる衝撃が小さい→疲れにくいと言えます。

この実験方法を用いて着地衝撃による脚の負担を検証しました。

実験の方法

  • 1.コットンスニーカーと従来品の、履き口より後ろの部分のアッパーを切り取り、かかと部分を露出させた試料を作成します。

  • かかと部分を露出させた
    コットンスニーカー

2.平らな床に接地したスニーカーのかかと部分に、10kgのおもりを落下させ、ソールの上に落ちた時の跳ね返りの加速度を「衝撃加速度」として計測し、コットンスニーカーと従来品を比較をしました。

実際の実験の写真

実験結果

実験結果は、コットンスニーカーは13.7±0.7Gであったのに対し、従来品は18.6±1.8Gという結果でした。コットンスニーカーは従来品と比較し、大きく衝撃緩衝性が向上したことになります。
この実験方法は、実際の歩行時とは少し異なりますが、衝撃加速度は、ソール部分の基本的な性能として、歩行の際の疲れにくさに影響する要素のひとつであると考えられます。
論文の中では以下のように書かれています。

コットンスニーカー 従来品
13.7±0.7G 18.6±1.8G
※測定3回の平均値

論文より抜粋

In our experiment, we evaluated the shock absorbability of the sole by dropping 10 kg weight onto the sole placed on the level floor and measuredthe impact acceleration. ・・・

・・・The previous sneakers had the impact acceleration of 18.6 +/- 1.8 G and the new ones 13.7 +/- 0.7 G.

和訳

本研究のソールの衝撃緩衝性は水平面上に接地したソール上に10kgの重錘を落下衝突させ,衝突時の加速度を測定し評価する方法をとった.・・・(中略)

・・・従来品の衝撃加速度は18.6±1.8Gで開発品のスニーカー(コットンスニーカー)は13.7±0.7Gであった。

コットンスニーカーが衝撃を緩衝できる秘密

コットンスニーカーが、従来品に比べて大きく衝撃緩衝性がアップした秘密は、インソールとアウトソールに加え、アウトソールのインソール側にあるミッドソールの構造にあります。
左がコットンスニーカー、右が従来品のインソール部分を横から見た時の断面図です。

ソール部断面図

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ミッドソールの溝

理由のひとつは、アウトソールのインソール側にあるミッドソールの工夫です。ミッドソールの意匠を上の図のように変更しました。
従来品は深さ4.1mmの正方形の溝にしていましたが、コットンスニーカーは深さ6.4mmの逆三角形の溝にしました。この溝は、歩行時のアウトソールの屈曲を妨げないことを考えて工夫したものですが、この溝の形状、深さ、厚みを変更したことで、衝撃緩衝性が高まったものと考えられます。

またもうひとつは、アウトソールとインソールを合わせたかかと部分の厚みが3.6mm厚くなったことにより、衝撃緩衝性が高まったことが考えられます。従来品はカップインソールではなかったため、インソールが薄く衝撃緩衝性が弱いものでした。

またコットンスニーカーのインソールは、かかと部も含めて厚みをしっかり持たせた設計にしています。
(※詳細はスニーカー改良プロジェクト 第4回インソールとアウトソールの改良参照)

結論

これらの3つの実験を総合的に判断し、論文ではこのように結論付けています。

論文より抜粋

From the results shown above, the newly developed sneakers were able to stabilize the foot during walking, and absorb the landing impact better than the previous ones, and we can expect to reduce fatigue on the legs. It is difficult to quantify the tiredness since this is a sensation experienced by people. Nevertheless we conclude that our newly developed sneakers are "more comfortable".

和訳

これら3つの実験の結果から、コットンスニーカーは、従来品に比べ、歩行時の足部の安定性に寄与し、衝撃緩衝性も向上したことで、下腿部の疲労軽減が期待できることが示唆された。
人の感覚である「疲れにくさ」を定量化することは難しいが、本研究の結果から総合的に判断して今回開発したコットンスニーカーは「疲れにくい」靴であると考えられる。

コットンスニーカーは、現在、海外の店舗でも販売されています。
そのため、コットンスニーカーの機能を広く海外の方々にも知っていただきたいという思いから、論文は英語にしました。学会誌を購入いただければ、英語の全文をお読みいただくことができます。

学会誌;繊維製品 消費科学 お問い合わせ先

  • 一般社団法人 日本繊維製品消費科学会

また、今回の論文はコットンスニーカーの機能を科学的に証明したものですが、コットンスニーカーを履いていただけば、理屈だけではなく、「疲れにくく歩きやすい」の機能を実感していただけると思います。
商品ラインナップも、撥水機能の付いた「撥水コットンスニーカー」が加わり、より色も機能も充実しています。ぜひ一度、お試しください。

商品名 コットンスニーカー
(紳士用)
コットンスニーカー
(婦人用)
写真
サイズ 25.5~29.0
(0.5刻み)
22.0~25.0
(0.5刻み)
オフ白・ネイビー・黒・赤・スモーキーブルー・スモーキーグリーン・グレー・ブルー・ダークグリーン・マスタード 黒・赤・スモーキーピンク・マスタード
商品名 撥水コットンスニーカー
(紳士用)
撥水コットンスニーカー
(婦人用)
写真
サイズ 25.5~29.0
(0.5刻み)
22.0~25.0
(0.5刻み)
オフ白・グレー・ネイビー・黒・赤 オフ白・グレー・ネイビー・黒・赤
※2015年4月時点

[関連サイト]IDEA PARKプロジェクト「定番スニーカーの見直し 2」