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松江工業高等専門学校との共同研究

2 松江工業高等専門学校との共同研究

松江工業高等専門学校は、島根県松江市にある国立高等専門学校です。この学校の齋藤誠二先生が歩行と靴に関する研究論文を発表されていたので、「疲れにくい」や「歩きやすい」を実現する方法や、「疲れにくさ」や「歩きやすさ」をどのように評価したら良いのかなど、改良のヒントを教えていただけないかと思い連絡してみました。すると齋藤先生から「よかったら一度松江にいらしてください」とお返事をいただいたので、松江工業高等専門学校で会ってお話を伺うことになりました。

まめ知識;国立高等専門学校とは? 高等専門学校をご存じですか? 一般的には「高専」と呼ばれています。「名前は聞いたことがあるけど…」という方もいらっしゃるかも知れませんのでご紹介します。 国立高等専門学校とは、文部科学省の国立高等専門学校機構の傘下の、より実践的に活躍する技術者を養成することを目的とした国立の学校です。そのため通常の高校や大学とはプログラムが異なります。中学校卒業後に入学し、5年間の一貫教育の本科と、その後に専門教育のための2年間の専攻科があります。本科を卒業すると短期大学卒業と同等、専攻科を卒業すると大学卒業と同等の学位が得られます。現在全国で51校あり、日本のものづくりの現場で活躍する、優秀なエンジニアを数多く輩出しています。

本題に入る前に、松江市と松江工業高等専門学校について少しご紹介します。

松江ってどんなところ?

松江市は島根県の東部に位置する市で県庁所在地です。松江にはたくさんの観光名所があります。

  • 例えば、「大和しじみ」の捕獲量が全国の湖沼の中で日本一の宍道湖があります。
    実はその宍道湖、夕日の美しさでも有名でその夕景は日本夕陽百選に選定されています。
    夕日スポットにはカメラを持った多くの人が集まっていました。
  • それから、松江のシンボルともいえる松江城。
    千鳥が羽根を広げたように見える入母屋破風の屋根が見事なことから、別名「千鳥城」とも呼ばれています。
    最上階の望楼から360度にわたって松江市を一望することができ街並みの眺めは圧巻です。
  • その他、隣接する出雲市には、縁結びの神様として名高く近年パワースポーットとして注目されている出雲大社や、日本庭園の美しさで知られる足立美術館(安来市)があります。

松江工業高等専門学校ってどんなところ?

松江工業高等専門学校は、「(ま)学んで、(つ)創れる、(え)エンジニア」を合言葉として、教育に取り組まれています。エンジニアを育てるための多くの行事が催され、学生さんは校外のコンテストにも積極的に参加されているようです。最近ではプログラミングコンテスト(プロコン)で審査員特別賞を受賞、高専ロボコン中国地区大会では優勝されています。
(松江工業高等専門学校のHPはこちらから http://www.matsue-ct.ac.jp/

  • 坂道を上ると正門です
  • 中庭も素敵な造りになっています

齋藤誠二先生は、大学、大学院と人間工学の観点から、人間の歩行や靴などの履物の研究を専門に研究されています。松江工業高等専門学校で教鞭をとられる傍ら、専攻科の学生さんと研究を続けています。最近では高齢者が転倒しにくいスリッパを研究テーマにされているそうです。
まず先生に、現在のスニーカーを見ていただき、「疲れにくい」や「歩きやすさ」といった視点から見て、何をどうしたらいいのか実際の商品を見ていただきながら、議論しました。

齋藤先生のお話によると、まず靴の構造は大きくソール部分とアッパー部分の2つに分けることができます。この中で「疲れにくさ」や「歩きやすさ」に最も影響が大きいのが、ソール部分の特にインソールだということでした。もし改良をするとしたら、インソールを人間の歩行動作を考慮した製品にするのが理想的だと教えていただきました。

靴の構造

歩行動作を考える上で、実際の歩行状態がどのようになっているかを見ることのできる設備が校内にあるということで設備を見せていただくことにしました。「運動解析室」というこの部屋に入るとびっくり!! 見たこともない最新鋭の設備の数々が並んでいます。思わず、「すごい」と叫んでしまいました。その設備をいくつかご紹介します。

  • リアルタイム光学式モーションキャプチャシステム 人体や物体に専用の光学マーカーを取り付け、その動きをマーカから専用のカメラでリアルタイムに計測することによって、3次元での動作解析ができます。
  • フォースプレート このプレート上を歩行すると、その時の圧中心や重心動揺、衝撃力を計測することができます。
  • テレメトリー筋・心電計 加速度計 ワイヤレスタイプの携帯型筋電計です。センサを換えることで心電図・加速度の計測も可能です。

この中でもモーションキャプチャシステムは、人の動作やスポーツ選手のフォームについて研究している人にとっては憧れの設備です。最近は映画のCG作成にも用いられています。
しかもこれらの最新鋭の設備をこれだけの規模で持っているところは、いくつか大学も調べてみましたが聞いたことがありません。

ぜひこれらのすばらしい設備を使って、専門家である齋藤先生にお手伝いいただきながら、スニーカーの改良ができたら、きっといい商品ができるんだろうな。でも普段履きのスニーカーで、しかも価格が¥1,980の商品だからどうだろう…少し迷ったのですが、思い切って聞いてみました。

「齋藤先生と共同研究をお願いすることはできませんか?」
「あっ、いいですよ。」
とあっさり引き受けてくださいました。

松江工業高等専門学校と齋藤先生という強力なパートナーを得て、「疲れにくくて歩きやすい」スニーカーの具体的な開発が始まりました。