研究テーマ

社会貢献を知ろう!「良品計画社員と学ぶ寄付先団体の活動」第37回 放課後NPOアフタースクール×良品計画 人へ、こころへ、医療を届けて、未来をつくる

運営の壁と、その先の可能性

田中:今、アフタースクールはどのくらい広がっているんですか。

秋山さん:継続的に活動を行なっている拠点は、都内で2校、神奈川に1校、名古屋に1校で、あとは単発での開催です。山形や神戸など地方にも広がっているのですが、基本的に、その地域のNPOに主体となって運営してもらいたいと思っているので、それぞれ地元のNPOに任せています。団体によっては、1度、私たちのところに研修に来ていただき、ノウハウを共有した後、各地域で企画・運営してもらっています。

田中:地元でのネットワークを最大限に活かせるのは、その地域のコミュニティですしね。

間野:アフタースクールをもっと多くの学校で実施されていないのはなぜでしょうか。より多くの子どもたちに向けて開催できないのはもったいない気がします。

秋山さん:放課後教室を運営する団体の募集はあるのですが、なかなか実際の運営につながっていかないのが現状です。まずはより良い実績をつくっていくことで、多くの行政からの信頼を得ることが必要です。その壁を超えることができれば、私たちの活動の場はより広がっていくと考えています。

間野:私の住んでいるところでは、地域か市が学童を運営しているようです。でも、地域運営の学童はOBや保護者への負担が大きかったり、市の学童は終了時間が早いなど、それぞれ問題を抱えています。だからこそ、NPOが運営するアフタースクールは、子育てにも新しい可能性を開いてくれる気がします。共働きの親は助かりますよね。

秋山さん:そうですね。アフタースクールを通じて、子どもたちだけじゃなく、親御さんにも良い影響があれば。「安心・安全な預かり」と「多様なプログラム」、両方を兼ね備えるという意味でアフタースクールは新しいコンセプトなので、協働してもらえる先進的な行政を今探しているところです。

チャレンジ意欲が高まった子どもたち

田中:アフタースクールでのプログラムを通じて、子どもたちが変わってきたという実感はありますか。

秋山さん:活動を始めて長い学校では、少しずつ変化を感じます。一つは、いろいろな大人に会っても動じなくなったこと。どんな人にも、こちらがドキドキするくらい対等に口をきいています。いろいろな人に興味を持ち、多様性を受け入れられるようになっていますし、新しいことにも躊躇しない。チャレンジ意欲は間違いなく向上していると思いますね。

間野:毎日、プログラムを自分の意志で選択し、少しずつ得意なことを増やしていく体験は、子どものその後にも大きく影響しますよね。ぜひ、私の息子も参加させたいと思います。

田中:視野はとても広がりそうです。印象に残ったプログラムやエピソードはありますか。

秋山さん:「家づくり」はこだわったプログラムの一つです。2年がかりで行い、1年目は、まず建築。棚くらいの大きさの2階建で、子どもたちが中に入っても遊べるような家をつくりました。

田中:家!一から作ったんですか?

秋山さん:はい。建築家さんと地域の大工さんを招き、設計してもらったんです。2年目はインテリアコーディネーターさんを呼んで、外装。子どもたちから提案してもらい、コンペ形式でデザインを決めました。つくる過程もおもしろかったですし、完成したときの感動は忘れられません。それ以外のプログラムでも、普段笑わない子が、プログラムの中で市民先生から賞をもらった時にとっても良い笑顔を見せたりと、エピソードには事欠きません。

田中:子どもたちと向き合うことで、大人が得ることもきっと多いのでしょうね。もっと活動を広げていくために、企業が協力できることはありますか。

秋山さん:子どもたちの放課後を取り巻く環境に根ざした問題を、もっと多くの方に知ってもらいたいので、協働で実施する出前授業を、企業さんからも告知していただけたら。普段私たちがリーチできない方々に広く届けられるのは、とてもありがたいです。

間野:無印良品のお客様の多くは、小学生のお子さんがいらっしゃる世代なので、アフタースクールの需要は大きそうです。

秋山さん:私たちもサイトを運営していますが、その世代の方に、なかなか私たちを見つけてもらえないのも課題です。まずは知ってもらうことが最優先ですね。

自由な時間が創造力を育む

秋山さん:私からも質問していいですか。ご自身が受けてみたい、もしくはお子さんに参加させたいというプログラムがあれば、教えてください。

間野:放課後NPOさんのサイトで見つけた、「速く走れるようになる」プログラムですね。体育の授業では学べないし、親も教えられない。でも子どもにとっては自信を持ちたいところだと思うんです。私の息子は、以前、運動会のかけっこで思うように早く走れなかったことを、今でも少し気にしています。競走意識をあおる必要はないのですが、子どもたちが自分で「これだけできた」、「これだけほめてもらった」と成長を実感することは重要ですよね。でも親がその実感を持たせてあげられているかというと、なかなかそれも難しい。だから、子どもが自分のがんばりをしっかり認識できて、親も一緒に喜べる。そんなプログラムがあればといいなと思います。

秋山さん:成長にも向上心にもつながるプログラム、素敵ですね。活動規模もそうですが、プログラムの質の向上にも日々チャレンジしていきたいです。

田中:自分が小学生だったときのことを思い出していたのですが、昔はおもちゃを与えられなくても、自分たちで遊んでいた記憶があります。今はモノがあふれすぎて、かえって創造力の入る余地がなくなってしまっているのかもしれませんね。もっと子どもたちが、自分で考えて創造できるような機会があればいいな、と思いました。

秋山さん:その通りだと思います。先日、ポーチを簡単につくるプログラムで、1時間を確保していたのに、15分くらいでみんな出来てしまって。そうしたら、余った時間で子どもたちはどんどん自分たちで工夫を始めたんです。結果的に、誰も飽きることなく、プログラムを終えました。その時、自由な時間で子どもたちの発想力が発揮されることを改めて感じました。

田中:そういった自由な時間からコミュニケーションも生まれていくんでしょうね。たくさんの可能性が広がる時間は貴重だと思います。

秋山さん:放課後は自由なので、何でもできます。学校の先生たちからも、「授業ではできないことができていいね」と羨ましがられることもあります。

田中:学校の先生たちも、むしろ「放課後の先生」に憧れていたりして(笑)。

後押ししてくれるのは、保護者の声

秋山さん:今後の当座の目標は、行政の認可のもと、理想のアフタースクール拠点を1校見つけることです。3年以内を目指して活動しています。また、拠点校以外の方から参加したいという問い合わせがよく来るので、誰でも参加できる企画として週末に大使館や美術館、工場見学などに行く遠足も始めています。これも、力を入れていきたいですね。保護者の方々の声が私たちの後押しをしてくれるので、ぜひ、いろいろな意見をお聞きしたいと思っています。

間野:子どもたちの、一人ひとりの違う個性を伸ばせる機会となりそうですね。勉強に自信がなくても、放課後に挽回できることもあるでしょうし。小さいころ、野球やゲームが得意で、放課後になると強い子っていましたよね。何かひとつ夢中になれるものがあれば、自信につながる。いろんな場所で子どもたちがそういった「何かひとつ」を発見できるといいなと、心から思います。

秋山さん:そういう声をいただくと、嬉しくなります。私たちも自分たちの活動をもっと広めたいなと思いますね。共働きの方々も増えていますし、保護者の方のご意見を聞けるのは貴重な機会なので、今日はそういった意味でもお話ができてよかったです。

対談を終えて

田中:今回の対談がきっかけで、アフタースクールのことを知りました。放課後の問題や可能性について、子どもの有無にかかわらず、もっと多くの方が知り、身近な課題として捉えることが重要だと感じました。日々の生活の中で、つい見過ごしてしまう問題も多いのですが、こういった活動や課題の理解を深める場を積極的につくり、広めていくことが、未来の自分たちの助けにもつながるはず。もっと「伝えること」で協力ができたら、と思いました。

間野:私が小学生だった頃は、放課後、ランドセルを置いて外に出ると仲間がいたので、自分の子どもが小学校に上がった際、学童の存在を知って驚きました。学童の抱える問題や運営方法も段々と分かってきて。アフタースクールのようなプログラムがあると、子どもたちが毎日楽しく過ごせ、成長の糧にもなる。多くの体験を重ねてくれると親としても嬉しいし、親子での会話やコミュニケーションが増えるきっかけにもなると思います。素敵な活動ですので、何かお手伝いできればと思います。

放課後NPOアフタースクールは、2014年2月25日から2014年8月24日の期間、
無印良品ネットストア「募金券」で募金を実施し、
109人の方から合計45,000円の寄付を集めることができました。
ご協力ありがとうございました。
実施中の募金券はこちら