研究テーマ

ATELIER MUJIトークイベント「無印良品が考えるこれからの暮らし─なぜ今暮らしを考えなければならないのか─」(3/4)

2012年8月1日

このレポートは、2012年2月25日にATELIER MUJIで行われたATELIER MUJIトークイベント「無印良品が考えるこれからの暮らし」を採録しています。

この次のコラムの例はおもしろかったです。

子供部屋について。横に一列こう並んで寝るんですね。これは、「寝台列車みたいでひどいですね。無印良品も暮らしに関しては退化しましたね」というお叱りがあったり、逆に「これはいいね」といったご意見も来るわけです。実際、65平米といったらそんなに広くないのですけれど、そこに4人家族が暮らすというのは普通にあります。そのときに、子供が1人1部屋ずつ持って、しかも中途半端な広さの部屋だったら、かえって思い切って仕切るだけにして、みんな一緒に寝てもいいと言う考え方もありますよね。その分他のスペースを広くとることも考えられます。
このころから模型もつくって見せるようになります。これは効果的でした。

これは部屋を小さくして廊下を広げて、廊下にデスクと本棚を置いたらどうでしょうと。廊下を廊下とするのではなくて、廊下も部屋の1つにしたらどうでしょうという、そういう提案でした。これもなかなか評判がよかったです。

また、お客様の家を、暮らし観察といって訪問させてもらうこともしました。Web上で見せてくださいとお願いしたところ、3,000人ほどの人が応募してくれました。
訪問して思う事は、モノの持ち方ですね。これはとても興味深いです。本当に同じ面積でもものの量がまったく違う、ものの量と暮らしは反比例するのではないかと思うぐらい、ものが反乱している家もありますね。もののもちかたについてもアンケートをしてみました。これは大変なアンケートでした、まずアンケートを始める前に家にあるものをメジャーを使って測ってもらいます。洋服だったらハンガーに何メートルかけてあるとか全部調べてもらって、大きさも段ボール箱1個分で換算して、それで集計していきます。

集計結果は、例えば、畳んである衣類の量は平均15ケース、吊るしてある衣類の量は4ラック。1ラックは幅が87センチですから、3メートル60センチぐらいになります。靴の数は世帯平均27足、大人は1人12足、子供は6足というような答えもでてきます。もちろんこれは平均値ですので、くらしは平均値で過ごしている人は少ないもの。平均値は誰かのモデルではないんですね。多くの場合、それぞれの人は平均とは異なります。例えば本が多い人もいるし、洋服が多い人も多いし、音楽のCDが多い人もいるわけで、逆にこの平均値からはみ出る部分、ここが暮らしともいえるかもしれません。ですから、平均値より多いとか少ないとかじゃなくて、自分がどんな暮らし方をしたいのかというのを考えていくということが大切なのだと思います。
ちなみに、その外れ方もすごくて、靴も200足持っている人もいるわけですよ。そうすると私はすかさず伺って、200足を見に行くのです。200足を持っている人の家を見るといろいろなことがわかりますね。そうした人の意見からシューズクローゼットの開発をするとか。逆に家族全員で10足しかないとか6足しかないとかいう人もいます。「靴はもう完全につぶれるまで買いません」みたいな人もいるわけですね。そういう幅を見る事も、また伝えることもすごく大事だと思います。皆さんにその両方を知ってもらうことで自分の暮らしはどうなのかという部分が考えられますね。
これは、衣類についてのアンケート。

衣類を持たないためにどんな工夫をしていますかという問いです。同じようなものは考えてから買う、不用になった服を捨てる、家族で服の貸し借りをする、試着してから買う。あとはリストをつくっておくとか、いろいろな知恵やアドバイスがありました。
次の絵は子供のおもちゃをどう持たないようにしますか。また捨てる工夫はとか、捨てる工夫で今でも覚えているのは、「子供が眠ってから捨てる」と書いてあって、なるほどなと。でも、子供のおもちゃって意外と捨てられないんですよ。ふだんもう使っていなくても、小さいころに使っていた子供のおもちゃって、何となく思い入れがあるからずっと残っていたりするものですね。

これは、整理整頓が得意な人、得意じゃない人がどのくらいいるか。

大体1割の人が得意なんです。好きか嫌いかだと半々ぐらいですが、得意となると1割ぐらいですね。

それで、この1割の人とそれ以外の人の習性を比較してみたのですが、得意な人は、モノの場所は正確に決める。「すべて正確に決める」が54%。その他の人は87%が「大体決めている」ですね。この正確に決めているか、大体決めているかの差が大きな差になってくるわけです。私もたくさんの家を見に行きますけども、本当に1割の人ぐらいしか整理整頓されていないです。人のことは言えないですけども、でも、本当にきれいにするって大事ですよね。家の中がきれいに整うと何か気持ちも整うし、安心した暮らしができます。何よりもモノというのは、モノの美しさというのはその背景が決めるところがありますから、いいものはきれいに整った中に置くことがとても大事なわけで、そういう意味ではなかなかできていないのが現代人です。日本人は特にモノが多いですね。
小分けの場所をつくる。

整理の得意な人は、小分けの場所をつくって、さらにラベルが張ってある。そこまでできるかと思いますが、無印良品はちゃんとラベル付きで売っていますから、ぜひやってみていただければと思います。
こうして、いろいろな考え方があるわけです。どんな暮らしをしたいのかというのは、実は「どんな」を形にしたのが間取りなのです。なので、間取りというのはよく考えたほうがいいし、また考えれば考えるほど楽しいものです。間取りという具体的な形にしてみることで、暮らし方というのがより具体的になるわけです。

次にお風呂についてです。

お風呂もいろいろとありますね。これはあるマンションで実現していますけども、お風呂をベランダ側に持ってきています。

これは寝室について。寝室を大きくするのか小さくするのか。これはかなり小さいタイプです。その分リビングが大きくなるので、リビングを2つつくっています。1つは普通のリビングで、1つはごろごろと昼寝ができるようになっている。
リビングのことを少し話しますと、リビングとは特別な機能を持たない部屋とも言えます。例えばダイニングとは何かというと食事を食べるところですね。キッチンは食事をつくるところですね。寝室は寝るところなんです。でも、リビングっていうのは何かをする以外のところなんのですね。ここがリビングが他の部屋とは全然違うところで、つまり家の中で余ったところがリビングなんです。リビングというのはくつろぐところ、団らんするところ、テレビを見るところ、いろいろな要素があります。お客さんが来たら客間にもなりますとか。だけれども、あまりにもいろいろな要素があるので、散らかるのです。

そこで、この提案は、リビングを2つつくってみたのです。少しくつろげるところと、団らんをするところ。そうやってリビングの目的を明確にすることで、団らんというのがもっとうまくいくのではないかなと。そして結果的に整理もうまくいくのではないかなということを考えてみたのです。

これは逆に、寝室を大きくして、寝室の中にもソファを置いたり。最近、眠る前にストレッチをする人が増えていますね。眠るときってすぐに眠るのではなくて、眠る前に体や心を切りかえていく、そういう時間でもあるわけです。宣伝になりますけども、無印良品のアロマディフューザーってとても気持ちがいいですね、こういったものを使って気持ちを切りかえて眠るのはいいと思いますね。