各国・各地で「日南海岸 ─美しい神話の国から─」

-出すぎた杭- 日本の田舎を元気にする新しい流れ

2015年06月10日

「これからの田舎と都会」最後のコラムは、少し自分のことについて触れてみようと思います。

僕はお金や成果などの指標に縛られ、常に危機意識溢れる空気のなか、20代中盤まで悶々としながら外資系企業で必死に働いていました。アジア諸国がすごい勢いで成長していくなかで、日本の衰退にとても危機感を感じていたのだと思います。しかし、6年前務めていた会社を退職し、宮崎県串間市へ移住したことが転機となり「危機意識が足りない呑気者でも、いいのでは?」と心から思えるようになりました。まさにこの「これからの田舎と都会」で紹介したような、頑張る人を見るにつれて、なんとなく「日本は大丈夫」と思えてきたのです。

何もかも包み込んでくれる、深く豊かな自然。満ち溢れる食べ物にゆるやかな時間の流れ、そして長い長い時間の中で育まれた文化。僕はその世界で暮らす人々に対して憧れ、ときに憤慨したこともありました。しかし、日本の田舎に溢れる愛に包まれ、いつまでも変わらない安心感のようなものに触れて、これが豊かというものだと知りました。そして同時に、これが停滞や衰退と言われるものなのだとも。

出る杭は打たれる

「出る杭は打たれる」日本ではよく聞く言葉であり、実際に目にする光景です。これが田舎にいけばいくほど、全力で打たれます。みんなと同じように埋まらないといけません。だけどいま、日本の田舎では、出すぎた杭がすごい勢いで増えている気がするのです。そして、「出る杭は打たれるかもしれないけれど、必ず次の高みへ引っこ抜かれる」ということを僕は感じています。出すぎた杭は引っこ抜かれます。どこか新しいステージへ、誰かが応援者として引っこ抜いてくれるのです。

この「都会と田舎」シリーズで紹介した、秋田、小豆島、宮崎の「出すぎた杭」の方々を僕らも少しでもお手伝いできればとご紹介していきました。「出すぎた杭」である彼らはイキイキと元気に、新しい価値を作っている人ばかりです。しかし、僕らが手を貸すまでもなく、彼らを面白いと思う人たちは沢山いました。リアルでの市場やインターネットを通じて、全国や世界へ羽ばたいていく姿を見ながら、これはまさに日本の未来なのではないかと考えていました。

日本の田舎のワクワクする未来

僕が危機意識の足りない呑気者でいられるのは、日本の田舎の豊かさと、「出すぎた杭」の存在があるからなのだと思います。「出すぎた杭」である彼らがいま、日本の田舎では益々必要とされています。

田舎の豊かさに感謝しながらも、己の信念を貫いて新しいステージへ挑戦する。そんな姿に、僕は日本の田舎のワクワクする未来を見たような気がします。

田舎で頑張る「出すぎた杭」を見つけたら叩くのではなくて、羽ばたくサポートをしてもらえたらと、心から思います。彼らの飛躍を少しでもお手伝いただけたら、これほど嬉しいことはありません。 そして、どうか皆さんも「出すぎた杭」になってください。「出る杭は打たれるかもしれないけれど、必ず次の高みへ引っこ抜かれる」のだから。

「これからの田舎と都会」のコラムに 一年間お付き合いいただき、ありがとうございました。僕も「出すぎた杭」として、また皆さんとお会いできること楽しみにしています。

  • プロフィール 久志尚太郎
    音楽やアート、旅や食が好きです。
    高校時代のアメリカ留学を経て、20代前半に世界25カ国放浪。
    25歳から宮崎県串間市で人口1000人高齢化50%の村での田舎暮らしを経験し、現在は東京を拠点に都会と田舎、世界と日本を行ったり来たりしています。

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