MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト リレートーク vol.3
過去の団地の景観的遺産 ~団地再生の現在の課題とこれから~

※このレポートは、2014年7月9日に行われたトークセッションを採録しています。

木下
これが最後になります。UR都市機構となった組織変遷後の集合住宅である「東雲キャナルコ-トCODAN」と「ヌーヴェル赤羽台」です。東雲は「新しい居住モデルによるまちづくり」をテーマに、UR都市機構の目指すまちづくりモデルが議論されるなかで設計が進められました。そして私たちADHがワークステーションとともに手がけたのが5街区です。
木下
こちらは、UR都市機構が管理する6ブロック、約2000戸の「島」と呼んでいました。今では周りに高層マンションが建っていますので風景はかなり変わっています。銀座から5kmくらいの距離にあります。昔の工場跡地です。複数の建築家のコラボレーションによる提案です。新しい時代にフィットする、東雲モードとは何か、という議論がなされ、そういうライフスタイルを実現するまちづくりを目指して、6街区の建築家とともに、山本理顕さんを座長としたデザイン会議が何度も開かれました。

住戸の内部のプランでは、多様化する家族のための新しい都市居住の形が模索されました。6街区の建築家たちがそれぞれ別々に設計しながらも、いくつかのデザインガイドライン、例えばスカイラインは統一して高さを揃えるとか、板状の住棟に穴をあけるなどといった要素を共有することで、6街区が統一感を持つ街並みになったのではないかと思っています。
 
 
木下
このS字が中央の街路で、フリーマーケットが開催されたり、お店や生活をサポートする施設があります。

住戸プランを紹介すると、これが一番コンパクトなものです。ホームオフィスを持つ、職住近接の住まいがひとつのテーマとしてありましたので、マルチスペースと呼ばれる、土足でも使用できるスペースを提案しました。こちらは細かい面積的な要求を満たすために、こぶのように突き出しプランになりましたが、可動家具を利用して、空間を幾通りかに間仕切れるように考えられています。
木下
これが先程、幾何学的な配置の名作としてご紹介した赤羽台ですが、その団地のA街区の建替です。一番最初に建替られた部分です。我々ADHとワークステーションとアーキテクチャー・ワークショップの3社のジョイントベンチャーで設計しました。
木下
これが1962年当時の配置、そして今はこのように、団地の骨格の道路と緑は継承しつつ、柔らかな囲み型の住棟により建替えが進んでいます。A、B、B1、B2、C街区は完了し、D街区が現在、建替工事中です。
木下
今は車社会なので駐車場を確保する必要があります。この囲み型も中庭に駐車場が設けられています。昔の団地計画とは与条件があまりにも違っているので、かつてのような緑豊かな団地景観をつくるのはなかなか難しくなっています。
住戸プランです。実際住んでいた方が戻ってきて入居された住宅2つ。「住まい方調査」というのフォローアップ調査も何年か後にやられてますけど、その際こちらのご夫婦は、真ん中の水回りを行き来しながら生活されているそうです。片方のワンルーム空間は、可動家具を用いて、自由に間仕切れるようにし、ここは納戸として、寝室が奥に取られています。もう一方のワンルームはご主人のコーナーと奥様のコーナーがあり、あとはリビングとして使われています。
 
木下
もう一つ、面白い使われ方の事例を紹介します。寝室が限定されてなく、2ルーム、2リビングのような間取りです。我々の設計としては、全部水回りを固めて、扉で閉め切れば、可動間仕切りで自由に部屋を仕切ることができるという提案だったのですが、このご夫妻は2リビングとして使用されています。当初はこの奥が寝室だったんですが、ある時お孫さんが来た際にご自身がこちらに寝られたら結構それも快適だったということで、今はこちらを寝室に使われている、ということです。

若干駆け足でしたが、これで私の説明を終わります。ありがとうございました。
土谷
ありがとうございました。続いてURの高原部長、よろしくお願いします。