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#04 ケニアのソープストーン生産者

今回が2012年度のMUJI×JICAのコラムの最終回となります。今回は、1)振り返りおよび今後について、2)2名の生産者の方よりインタビュー、3)イギリスでの英語本チャリティ・イベントについてお伝えしたいと思います。

1)ケニアとのプロジェクト振り返りとこれから

1年目は「チャレンジ期間」

昨年が1年目でしたが、全て慣れない中での取り組みで、開発商品の品質基準をクリアすること、商いを通じた社会貢献を維持するためにビジネスとして成立させることを目標としていました。ケニアなど途上国での生産には、厳しい条件下での物流や商流面のリスクへの対処など、いくつもの課題や挑戦があり、店頭で販売を実現させることができました。

2年目は「ステップアップ期間」

1年目の経験は、現地生産者にとって多くの知識と技術習得の場になりました。MUJIとの仕事では、品質面、納期面で、今まで経験したことのない基準にあり、それをクリアすることは生産者への大きな目標、刺激となり、次に向けた更なる成長、進化への意欲にも繋がりました。
今年の取り組みにおける改善点は、今までの記事の中でも一部に紹介しましたが、生産者が取り組んだ品質と納期に対する改善内容の他にも、プロジェクトに取り組む私たちも、より適正な価格で売れる商品を作るために、様々に取り組みを進化させています。
・納期面で数回に分かれた出荷を1度にまとめられたこと、昨年は航空便であったところを船便に変えたこと
・より生産者のレベルや技術に合ったデザインに変更したこと
・パッケージを簡略化することで、かかるコストを下げたこと
・プロジェクトの内容を日本及び海外の国で知ってもらえるよう、パッケージにこの取り組みの紹介ページにリンクするQRコードをつけ、商品に日本語と英語の説明をつけたことなどです。

パッケージにQRコードと日本語と英語の説明をつけています。

3年目は、「自立準備期間」

まずは最低3年続けていこうと、来年の企画を現在既に進めています。
来年も引き続き、生産品の品質の均一化、納期の遵守、取引関係者との円滑なコミュニケーションなど、様々な面で、更なるステップアップを現地の生産者団体、JICAと共に考えて進めていきたいと考えています。
最終的には、生産者の方々が世界中どこへでも、自分たちの地域の産品を自分たちの手で販売が出来て、ビジネスによる確実な収入が得られるようになることを目指しています。そのため、引き続き来年もプロジェクトを通した情報提供や技術面でのサポートを続けていきたいと思っています。私たちも、途上国とのビジネスの続け方、自分たちが出来る現地へのビジネスを通した支援内容をさらにブラッシュアップさせていきたいと目標にしています。

2)生産者のMUJI×JICAプロジェクトの成果に関するインタビュー

先日はJICAケニアチームが、生産者を訪問し、そこで得られた生産者の声をご紹介いたします。

Oominic Ogao Oswagoさん

ソープストーン彫刻を作り始めて32年になります。ここに大きな注文が入った際に、家から通って作業をおこなっています。今回のプロジェクトでは、石を削って形をつくる工程を担当しました。このプロジェクトでは、品質面やサイズに関して精密さや正確さが求められ、納期の遵守も求められました。このような納期と品質に対する注文はこれまで無く、学ぶところが多かったです。
この生産から得た収入では、2人の子供の学費を余裕を持って払うことが出来たので良かったです。子供の一人は、医療専門学校に通い看護婦を目指しており、もう一人は大学の教育学部に通い教員を目指しています。
今後も、本プロジェクトからの注文を通じて、自分の技術を高めて行きたいと思っています。

Stanley Mochama Ondariさん

ここではデザイナーとして勤めています。今回のオーダーでは、最初の試作から、そのつくり方を多くの職人に教える技術指導を行いました。このプロジェクトの生産を通じた経験を得たことで、他社からの注文でも、きちんとした品質管理、納期の遵守などに努める意識が高まりました。そのせいか、これまでより注文の数が増えたところがありました。
個人的には、今回の生産による収入で、建設途中であった家を完成することが出来ました。今後もこの取引を通じて、自分たちの商品の品質向上に努めていきたいと思っています。来年もどうぞよろしくお願いします。

上記、2名のインタビューから読み取れる意識の高まりは、私たちも同じです。来年の共同プロジェクトが、成功し、お互いに良い結果が得られるよう、これから準備をしていきたいと考えています。

3)ロンドンでの英語本チャリティ・イベントの実施

最後にお知らせです。このソープストーンの商品を作っているNPOでは、地域のためにPCルームや図書館を2012年に完成させました。これは、地域の住人が、その住む地域で勉強できるようになると、遠くへ出稼ぎや学びに村から出なくて良くなります。そうすると、家族と一緒にいながら、仕事や勉強ができるため、それがひいては地域の発展につながるという考えのもと、PCルームや図書館といった施設を作ったのでした。私たちが訪問した際に、NPOのリーダーより、ここに地域の人が、図書館で学ぶための英語の本が必要であるとリクエストを頂きました。
この考え方に共感しリクエストを受け、私たちが出来ることとして、英語の本を普段から使用しているイギリスのMUJIのロンドンのお店(Tottenham Court Road店)で、現在本を集めるイベントを実施しています。12月にロンドンのお店を訪問した際(写真下のカゴの中が、寄付を頂いた英語の本となります)には、写真のとおり、集まりつつありました。これから、ロンドンで寄付として頂いた本が、ケニアのNPOの図書館へ早く届くように見届けたいと思っています。そして、これらの本を使うことで、地域の方々の人生が豊かなものになる為のほんの少しのお手伝いができたら良いなと願っています。

4)まとめ

このMUJI×JICAのプロジェクトは、クリスマスのギフトシーズンを中心にこの2年間活動をしてきました。また来年に向けても、既に企画を進めています。また皆さんに商品を紹介できるのは、来年のクリスマスの時期になると思いますが、また来年もケニアからのギフト、楽しみに待っていただけるとうれしいです。
ありがとうございました。

このコラムはJICAケニアの協力の下、無印良品のプロジェクトメンバーが書いています。