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#03 ケニアのソープストーン生産者リーダーへのインタビュー

今年、ケニアに私たちが訪問した際に、生産者の技術リーダーへインタビューを行いました。今回はその内容についてご紹介します。

ローレンス(Laurence)さん(52歳)へのインタビュー

ローレンスさん

(質問1)ソープストーンの彫刻を始めたのはいつからですか? またどのようにして技術を学んだのですか?

(ローレンスさん)10歳の時から、ソープストーン彫刻を学び始めました。ソープストーンは、私たちの地域の宝物といえる地域資源です。昔、自分が小さなころ、父親がソープストーンの彫刻を家で行っていたのを見ながら、真似て始めてみたのです。皆、この地域に住む者は、自分よりも年長者の家族、つまり父親や兄の真似をしながら、家族の中で技術を学んでいきます。特別な技術を教える学校があるわけでもありません。

(質問2)ソープストーンの彫刻では、何を作るのが好きですか?

(ローレンスさん)長く作っていたのですが、チェスのセットをつくるのが好きです。

(質問3)今回、MUJIの商品づくりに関して思ったことはなんですか?

(ローレンスさん)MUJIのデザインはクールですね。MUJIとの仕事においては、特に、いろんな箇所を計測するという事を学びました。
今までは自分たちは、職人として、こちらで良いと思われる大きさで作っていたが、顧客に、サイズに対するニーズがあれば、そのサイズ通りに作っていくという事を皆で学ぶいい機会になりました。

毎日いくつ職人さんが作ったのか、日払いの人、週払いの人と台帳に管理をしています。

ひとつひとつに集中して、丁寧にソープストーンを削っていきます。

ローレンスさんは、まじめな職人肌リーダータイプで、今回はキャンドルホルダーの技術リーダーをしています。私たちと品質改善ミーティングを行った際にも、細部にこだわる職人気質と誇りをもたれており、積極的にリーダーとして指示を出されていました。

スタンレー(Stanlay)さん(47歳)へのインタビュー

スタンレーさん。手にしているのは、スタンレーさんのデザインした
スマイリング・ヒッポ(笑うカバ)と今年のMUJI×JICAプロジェクトの商品です。

(質問1)いつからソープストーンの彫刻を始めましたか?

(スタンレーさん)12歳から学び始めました。徐々に習って、真似をしながら実際に作って学びます。我が家では、父親も祖父もこのソープストーンの彫刻の職人でした。

(質問2)ソープストーンの彫刻をしている仕事以外の普段の生活はどのように過ごしているのですか?

(スタンレーさん)家族と過ごすことが多いです。私には6人の子供がいて、もう一番上は、23歳で、大学を卒業して新聞社で働いています。
仕事後や週末は、ニュース、TVなどを見てリラックスします。

(質問3)仕事で一番楽しいと思う事はなんですか?

(スタンレーさん)デザインをしている時が一番楽しい。頭でイメージしたものを形にしていくのは楽しいですよ。スマイリング・ヒッポ(笑っているカバ)のデザインが一番好きです。自分でデザインして12年間販売していて、今も人気あるロングセラー商品です。これは、良く売れたので、スマイリング・ヒッポの皿もつくりましたが、こちらも人気があります。自分がデザインしたものが、ロングセラーで売れるのは大変うれしいですね。

(質問4)MUJIとの仕事はいかがですか?

(スタンレーさん)MUJI×JICAのプロジェクトに、満足しています。昨年の動物の置物は少し難しい形状で、納期的にも厳しかったのですが、今年は、時間も計画的に確保できているし、デザインも複雑でなくなりました。
ただし職人たちに対しての技術トレーニングでは、たくさんの箇所をメジャーで測るため、教えるのも大変であったが、やっているうちに皆が、メジャーで測りながら作ることにも慣れました。印象としては、サイズに対する計測が厳しいのと、品質検査が厳しいという印象です。
今回キックオフ・ミーティングを職人全員で参加できたのは良かった。皆もMUJI、JICAやモノづくりでの考え方など理解できたと思います。

ひとつひとつ計測しながら丁寧にサイズ通りに削っていきます。

動物(きりん)のモチーフは、プラスチックの治具(じぐ)を用意して、
皆が同じデザインを彫れるような工夫を現地で行っています。

スタンレーさんは、今年トレイの方の技術リーダーとして、職人さんたちへの指揮を担ってくれました。特にトレイは、計測箇所も多いのですが、治具作成の工夫など、作りやすい方法を考えてくれました。ミーティングでも、修正内容決めたらすぐに、現場へ飛び出して指示を入れるなど、スピードと責任感をもったリーダーです。

インタビューを終えて

この二人のリーダーの内容からわかるように、このキシイという地域では、昔から子供が成長する中でも、ソープストーンが身近にあり、お父さんやお母さんの職業として見て育ち、自身も自然と大人になったらソープストーン職人となっているようです。確かに、この生産者たちの工房の近くには、多くの子供たちが、皆で遊んでいました。そしてよく見ると手にはソープストーンの石を持っているなど、一番身近なおもちゃにもなっているようでした。この地域の住人達にとって、このソープストーンが、地域特有の産物であり、このソープストーンと共に育ち、職業として、現金収入を得るための貴重な資源になっているという事が、今回のインタビューと訪問により改めてわかりました。
この地域特有の素材と技術を使って、ケニアのキシイから、ソープストーンの製品たちが、もうすぐ世界のMUJIのお店に紹介されます。お楽しみに。

周辺には数多くの子供たちが遊んでいます。手にもっているものはソープストーンです。

ソープストーンの加工途中で破棄された石を大事そうに持っている子供。

このコラムはJICAケニアの協力の下、無印良品のプロジェクトメンバーが書いています。