MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト 対談
団地を舞台に考える“感じ良いくらし”2019

2019年2月に「団地を舞台に考える“感じ良いくらし”」をテーマに、UR都市機構理事の里見氏と、良品計画代表取締役会長の金井政明との対談を開催しました。

里見 晋氏

独立行政法人都市再生機構理事(住宅経営等及び住宅部門経営担当)。
1987年旧建設省(現国土交通省)入省。
2007年京都市都市計画局、2009年UR都市機構経営企画部企画チーム、2012年国土交通省住宅局住宅総合整備課長、2014年長崎県副知事などを経て、現在に至る。多様な勤務経験を活かし、約1600団地・73万戸にも及ぶUR賃貸住宅の価値向上に取り組む。

金井 政明氏

株式会社良品計画代表取締役会長。
1993年株式会社良品計画入社。
1957年生まれ。西友ストア(現合同会社西友)を経て1993年良品計画入社。生活雑貨部長として長い間、売上の柱となる生活雑貨を牽引し良品計画の成長を支える。その後、常務取締役営業本部長として良品計画の構造改革に取り組む。2008年2月代表取締役社長、2015年5月代表取締役会長に就任、現在に至る。西友時代より「無印良品」に関わり、一貫して営業、商品分野を歩み、良品計画グループ全体の企業価値向上に取り組む。

光が丘パークタウンゆりの木通り
金井
2018年7月に、東京都練馬区の光が丘パークタウンゆりの木通り33番街の一角に「MUJI BASE」という場所をつくりました。現在は海外スタッフの研修および滞在スペースとして使っています。
スタートするときには周辺住民の方々にもお声がけし、ざっくばらんにいろいろな意見をうかがいました。そのときは150名くらい来てくださいました。
里見
光が丘のゆりの木団地もいろいろな方がお住まいですが、ご存じの通り、URの団地はけっこう高齢化が進んできています。
金井
立地はいいですね。近くの光が丘公園は素晴らしいし、都心へのアクセスもよい。MUJI BASEのすぐ西側に商店街があるのですが、そこに2018年12月に無印良品の店舗を出店しました。若い女性の店長が周辺住民のみなさんと交流しながら一生懸命がんばっています。
里見
先日、お寄りしました。オープン前にも隣の飲食店を訪ねたことがあり場所は知っていましたが、オープン前とオープン後では、商店街の雰囲気がだいぶ違ってきたという印象を受けました。
団地内の商店街への出店ということをそうとう意識してつくっていただいていますね。店長さんにお話を聞いたら、品物も要望に応えて入れ替えるとのことでした。無料で使えるキッチンが用意され、何人かで集まれる場所があってテーブルが置かれ、電子レンジやミシンまでレンタル可能で、都心部の店舗とは全然違うコミュニティショップみたいなイメージでした。
私たちにとっても、団地内の活性化を推進する際にヒントになる点が多いと感じました。
そもそも私たちは賃貸住宅を供給しているので、極論すればレンタルのはしりをやってきたわけですが、今日、シェアやレンタル経済といわれているような内容は古い団地ではなかなか採り入れられていなくて、これまでは住宅を貸す、集会所を貸す、施設を貸す、いわばハコを貸すことが中心でした。
今回の無印良品さんのお店のような仕組みを入れてもらうことで、シェアとかレンタルといった短時間の賃貸概念がいろいろな人の動きを生み出し、コミュニティを生成していくだろうと感じました。このあたりをもっと突き詰めたときに、賃貸住宅の可能性はもっと広がるのではないかと思いました。
金井
いまはまだお店をつくっただけですが、これから時間をかけて、URの職員の方や住民の方にも参加していただきながら、この商店街、このエリアを変えていきたいと思っています。
私は、サツマイモを植えて収穫し、落ち葉で焼いてみんなで食べる、あるいは柿を取る、干し柿をつくる、そういったことがあらためて大事な時代になってきたように思っているんです。柿やミカンの木って昔はどこの家にもありましたよね。食べられるものを植えて、みんなで収穫して食べるといった活動を通じて新しいコミュニティ形成に繋がるようなアクションをここではじめてみたい。そしてそれらをまち全体へと波及していければと思っています。
里見
本当に心強いです。MUJI×UR団地リノベーションプロジェクトは、最初は古い賃貸住戸の内部をどうするかというところからスタートしていますが、それがどんどんと発展し、いろいろなご提案をいただくことで、URの職員もすこしずつ意識が変わってきているように思います。 われわれには、住宅を供給するというミッションがベースにありますが、無印良品さんにいろいろなトライアルをしてただいて、私たちがいただくヒントが増えてきたというのがこの7年間だったと思います。