原研哉(無印良品アドバイザー、グラフィックデザイナー)

総評

MUJI AWARDは難しい。渋谷のスクランブル交差点のような場所で、まだ誰も踏んでいない地面を発見するようなものである。また、MUJIというプロダクツとしてそれを表現することも簡単ではない。癖や特徴の全くない人の物まねをするのが難しいのと同じで、手がかりがない。普通の賞ならポイントの取れそうな個性が逆にマイナスになる。だから形や素材から入るのではなく、人の営みからアイデアを探ることになる。その競争である。今年は大賞がぽつんと抜きん出ていた。

受賞作品について

大賞のバスタオルは着眼点が秀逸であった。タオルとして使い、少し硬くなったら足拭きに転用し、さらにボロになったら雑巾にする。その自然のサイクルにデザインをきれいにはめ込んだ。江戸時代の着物の使い回しのような、再利用のサイクルにぴしゃりと答えを合わせてきた点は、テーマに対する回答としても美しい。一日の時間を円環状に区切ったスケジュール帳も面白かった。一日の時間の円運動とノートをめくる円運動は、地球の自転と太陽をめぐる公転のようでもある。ノートの中に、新鮮なリズムがもたらされた。

審査員コメント