MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト
トークイベント「千里ニュータウンと団地の魅力」

※このレポートは、2016年2月6日に新千里東町団地集会所で行われたトークイベントの模様を採録しています。

パネリスト:

門脇 耕三氏

建築学者。明治大学 理工学部 建築学科/大学院 理工学研究科 建築学専攻 専任講師。
1977年神奈川県生まれ。2000年東京都立大学工学部卒業。建築構法、建築設計、設計方法論を専門とし、公共住宅の再生プロジェクトにアドバイザー/ディレクターとして多数携わる。

パネリスト:

太田 博一氏

1976年九州芸術工科大学芸術工学部環境設計学科(現九州大学芸術工学部)環境設計学科卒業。
(株)市浦都市開発建築コンサルタンツ(現(株)市浦ハウジング&プランニング)に勤務後、1993年に(株)太田博一建築・都市デザインを設立。住宅地計画、環境デザイン、まちづくりなどに従事。2012年より千里ニュータウン研究・情報センター共同代表を兼務。

パネリスト:

長谷川 晋一氏

UR都市機構西日本支社。技術の建築職。
設計・工事の担当部門で住戸改修、トータル改修、団地リノベーションの設計や工事に携わり、改修技術だけでなく、UR団地の魅力の再発見や暮らしの提案に興味がある。

モデレーター:

川内 浩司氏

「無印良品の家」住空間事業部開発部長。株式会社MUJI HOUSE取締役。
無印良品が考える賢く豊かな暮らしをかたちにすべく、新築注文住宅から、マンション、リノベーションまであらゆる「住まいのかたち」づくりに関わる。

川内
みなさんこんにちは。無印良品とUR都市機構による団地リノベーションプロジェクトは4年目を迎え、新団地のリノベーション住戸の入居者募集が始まりました。本プロジェクトは、これまでにない暮らし方を賃貸住宅で実現しようとする試みで、団地のリノベーションだけでなく、新しい地域コミュニティのかたちや、団地の再生についても皆さんと一緒に考えていくプロジェクトです。
本日のトークイベントのテーマは「千里ニュータウンと団地の魅力」。 新千里東町団地を中心に千里ニュータウンの暮らしとUR団地の屋外空間の魅力、今後の可能性などについて、建築家の門脇耕三氏、千里ニュータウン研究・情報センター代表の太田博一氏を迎え、皆さんと一緒にその可能性を考えていきたいと思います。
では早速、太田さんお願いいたします。
太田
はじめまして。千里ニュータウン研究・情報センター代表の太田です。まずは千里ニュータウンのあらましと、ランドスケープの特徴についてご説明します。

千里ニュータウンは千里丘陵に開発されました。かつての農業用溜池を活かして公園の池にしたり、開発地の周辺を囲むかたちに丘陵の緑を残して都市化のスプロールを防ぐグリーンベルト(千里緑地)にしたりと、千里丘陵の特徴を活かして設計されています。もともとあった竹林や赤松林の一部は公園や緑地に受け継がれています。さらに、谷と山が入り混じった複雑な地形をうまく活かし、谷には車道を通して、丘の部分は住宅地として、住宅地を歩道橋で結ぶことで歩車分離にしています。
太田
次に千里ニュータウンの団地について紹介します。千里の団地の住棟配置にはすべての住戸が南向きになる平行配置と、東向きや西向きの住戸を持つ囲み型配置の2つのタイプがあります。囲み型配置は、住棟をロの字型やコの字型に囲って中庭を設け、中庭をコミュニティ交流の場としているのですが、千里ニュータウンの建設初期には公団は南向きの住戸を基本にしていましたので、囲み型配置は行われていませんでした。しかし、平行配置であってもいろいろ工夫を重ねて、コミュニティ交流の場を生み出す住棟配置や住棟タイプを実現しています。

1960年代に千里ニュータウン最初の公団団地である千里津雲台団地が建設されます。平行配置ではありますが、北側から階段室に入る住棟と、南側から階段室に入る住棟とを向かい合わせになるようにペアで配置して、住棟間のコミュニティ広場で住民が顔を合わせるように設計しています。
太田
また、ボックス型の中層住棟も導入されました。ボックス型とは、階段室を挟んで1フロア階あたり2住戸のスリムな住棟で、これを歩行者路沿いに並べることで住棟間に空間を生み出して、道沿いに適度な開放性を持たせています。さらに、歩行者通路をまっすぐではなく緩やかにカーブさせているところがミソで、平行配置ではあるけれど道がカーブしていることで歩くに連れて視線の向きが移り変わるように工夫されています。
太田
千里青山台団地は、斜面を残したまま住棟を建てるスロープ造成が特徴です。
また、千里竹見台団地では、公団初の高層住棟が採用され、スター型、ボックス型、3層スキップ型といったように、多様な住棟形式が採用されています。