ごまだしは、もともとうどんを作るのに出汁をとったり、味付けをする時間がないほど忙しかった漁家の女性たちが、豊かな魚の恵みを生かして考案した保存食。流れの早い豊後水道(ぶんごすいどう)が育てた魚を皮ごと焼き、身をほぐしてたっぷりのごまを加えて作るため、魚の旨味とごまの香ばしさが抜群です。
「原料がシンプルかつ素朴なだけに、調味料にもこだわって、多くの人に懐かしいと思ってもらえるようにこだわりました」と桑原さん。佐伯では“エソ”と呼ばれる白身魚を使うことが多いそうですが、主原料の魚の種類を変えることで、商品を多様化しています。「どこよりも新鮮な魚をどこよりもふんだんに使っているのが自慢です」。
漁村女性グループめばるが結成されたのは、2004年のこと。「水揚げされた魚で、小さなものや形が崩れたものが廃棄処分されている様子を見て、魚の命を大切にいただかないと」と、桑原さんは近隣の漁師の妻らに声をかけ、魚の移動販売からスタートしました。
そこで実感したのが、人々の魚離れが進んでいるということ。「少しでも多くの人に魚の食べ方を学んでほしい」と、その後は佐伯市の若い母親を対象とした「めばるの料理教室」も開始。魚の3枚おろしの仕方やごまだしの調理方法などを伝授しているといいます。
そうめんやお茶漬け、お味噌汁や卵かけごはんとも相性の良い、ごまだし。生クリームとオリーブオイルを加えてバーニャカウダソースとしても活躍してくれます。2014年9月には、10年間温めてきたごまだし料理のレシピ本を刊行。万能調味料としてのごまだしの可能性を存分に伝えています。