長野県須坂市。かつて養蚕業のために一面覆われていた桑畑や平坦地の水田は、時代の移り変わりと共に、りんごやぶどうなど果樹畑に転換していきました。日本有数の少雨地帯で、かつ、水はけの良い扇状地は、昼夜の寒暖差が大きく、日照量が多いため、美味しい果実を育てるにはうってつけの気候風土だったのです。長野県果樹試験場が須坂市に置かれていることが何よりもの証です。

そんな土地で美味しいりんごとぶどうづくりに精を出すのが、展伸園の丸山さん親子です。須坂の人々の“進取”の気質を持ち合わせた丸山さんは、かつては米や麦を生産していましたが、昭和44年頃からりんごやぶどうへと転作していきました。

以来、この土地ならではの、この土地に一番合った品種を追求しながら作り続けてきた丸山さん。新しい品種にも積極的に挑戦し、ぶどうでは黒ぶどう「ブラックビート」や赤ぶどう「バイオレットキング」など美味しくも珍しい品種を須坂でいち早く栽培に乗り出し、りんごでは2018年に長野からデビューしたばかりの夏りんご「シナノリップ」や、果肉の赤い「ムーンルージュ」という希少な品種なども手掛けています。

品種のみならず、栽培技術の向上にも余念がありません。一つぶどう畑を見てみても、一般的には四方八方に小枝を伸ばしていくところ、丸山さんは一方向のみへ枝を伸ばしていく栽培法。この方が管理がしやすい上、発育も良くなったんだそう。品種によっても管理方が異なるため、新しい品種を試す度に試行錯誤の連続だといいます。

りんごなどは少し標高の高い産地というだけで、市場では高値で取引されたりすることもあるようで、そんな市場の法則に対していつも疑念の念を抱き続けてきたと話す丸山さん。進取の精神と反骨精神が、栽培技術の向上や新品種への挑戦に向かわせているのかもしれません。展伸園の珍しい果実には、そんな想いが込められています。