商品開発者に聞いてみました
工場で靴下つくりの修行をしたことのある商品開発者が、靴下の魅力や、靴下にまつわるくらしのコツを毎月お届けします。
ひとのかかとは直角。
だから、かかとを90°に
編みたてました。
一般的な靴下は120°でできています。
わずか30°の差から生まれる心地良さを、多くの人に届けたい。
そんな思いから直角靴下の開発がはじまり、⻑い年月をかけて研究と改良を続けてきました。
いまでは、無印良品のすべての靴下は直角になっています。
足のかたちと同じ直角だから、かかとがすっぽりと包みこまれる。
かかとがぴったりフィットするから、余分な生地がなく、動いてもずれにくい。
動いてもずれにくいから、足を締め付けなくてもいい。
くるぶしが見える丈の靴下です。靴を脱ぎ履きするときや、歩いているときに、脱げたりずれたりしないよう、試し履きを重ねて開発しています。
ふくらはぎの真ん中くらいまでの丈の靴下です。履き口が足の一番膨らんでいるところにくるので、締め付けが少なくても、ずれ落ちにくいように工夫して設計しています。
足首の上くらいまでのショート丈の靴下です。コーディネートのアクセントにもできるよう、色や柄にバリエーションを持たせました。
スニーカーイン靴下よりも、さらに浅履きのフットカバー。靴を脱ぎ履きするときや、歩いているときに、脱げたりずれたりしないよう、試し履きを重ねて開発しています。
成長に合わせてはけるよう、幅広いサイズに対応できる独自の踵の使用を採用しました。足口の内側には、兄弟姉妹でも区別がつくようにサイズ表示が編み込んでいます。お名前も書くことができます。
工場で靴下つくりの修行をしたことのある商品開発者が、靴下の魅力や、靴下にまつわるくらしのコツを毎月お届けします。
「かかとに据わる靴下」──チェコでは、履き心地の良い靴下のことを、そんなふうに表現するそうです。チェコのルジェナおばあちゃんが編んだ靴下に出会ったのは2006年でした。
「かかとに据わる靴下」──チェコでは、履き心地の良い靴下のことを、そんなふうに表現するそうです。チェコのルジェナおばあちゃんが編んだ靴下に出会ったのは2006年でした。
東欧のチェコは雪国であるため、氷点下15度という日も珍しくなく、外出時はブーツに分厚い靴下を履いて足元もしっかり防寒しなければなりません。
ルジェナおばあちゃんが編んだ靴下は、「直角」のかたちをしていました。靴下の編み方は母親を真似て自然に覚えたそうですが、かかとの編み方はおばあちゃんが独自に考えたのだとか。
履いてみると、かかと部分がすっぽりと収まって余ることなく、ずれ落ちにくく、とても履き心地が良いものでした。
履く人のことを考えて、履き心地の良さを追求し、履く人に喜んでもらえる靴下――ルジェナおばあちゃんが編んだ「直角」靴下の心地良さを、もっと多くの人に手軽に味わって欲しい。そんな思いから、手編みでかたちづくった直角を機械編みで再現するという、今まで誰もやったことのない挑戦が始まりました。
靴下と聞いてみなさんが普通に思い浮かべるのは、「くの字」に曲がったあのかたち。120度の靴下です。角度にするとたった30度の差ですが、これが大きな壁でした。 どうすれば、この「くの字」を「L字」に変えられるのか――靴下メーカーの方々とのミーティングがスタートし、早速、研究開始です。関係者みんなで、1足の手編み靴下を代わる代わる履いてみました。「う~ん、なるほど」かかとがすっぽりはまるその快適性は、誰もが実感できるのですが、ただただ唸るばかり。唸っては靴下を眺め、眺めては履き、を繰り返すだけで、なかなか答えは出てきません。
そこで、「実際に編み方を見て研究しましょう!」ということになり、チェコのおばあちゃんの娘さんに来日していただくこととなりました。2006年5月某日。社内の関係者全員が揃う中、チェコから来日した娘さんに、靴下の手編みを実演していただきました。そして、その一部始終を研究のためにビデオ撮影しました。ところが、撮影はしたものの、そのビデオを観ても、出てきた答えは「やっぱり、わからない...」。手編みの編み工程自体も非常に特殊なのですが、それを機械編みにしようとするとさらに難しく、関係者一同、首を傾げるばかりです。また振り出しに戻って、一からやり直し。そんなことの繰り返しでした。
一方、工場探しも難航しました。そもそも、一般的なものづくりに逆行して非効率的なことをしようとするのですから、そう簡単に見つかるはずはありません。何度も何度も問い合わせた結果、編み機を改造(調整)するしかないという結論に至りました。 そこから、試作と根気の戦いが始まりました。サンプルを作っては試し履きし、また修正をかけては試し履きをする、という工程の連続です。直角に編み立てては、かかとが余りすぎないか、足の甲がたるみすぎないか、ズリ落ちないか、と検証していきました。納得のいくサンプルができあがったのは、こんなやり取りを10回以上も重ねた後のこと。こうしてやっと、チェコのおばあちゃんの手編みの靴下を日本の靴下に反映した「足なり直角靴下」が誕生したのです。
2006年11月、たった3アイテムでスタートした「 足なり直角靴下」。2010年2月からは無印良品のおおよそすべての靴下が直角になっています。
世界の農薬使用量の約1/4が使用されるといわれているほど、綿の栽培には大量の農薬を必要とします。つまり、綿の栽培はそれほど、時間と手間がかかるのです。そして、大量の農薬が土地に滞留し、生産者やその周辺に暮らす人々、生物に多大なる影響を与えることは想像に難くありません。
無印良品は「感じ良いくらし」の実現をめざして、ものづくりを進めています。もし、私たちのつくる商品の原料を生産している人たちが危険にさらされていれば、それは本当の「感じ良いくらし」の実現にはなりません。私たちは環境や生産者にやさしい持続可能な栽培を目指し、3年以上農薬や化学肥料を使っていない土壌で栽培された「オーガニックコットン」を使っていくことを決意しました。
しかしながら、現在のオーガニックコットンの生産量はコットン全体のわずか1%未満。農薬を使う通常のコットンと比べると、オーガニックコットンの収穫量は作付面積あたり70%程度になってしまうためです。
これを解決するため、無印良品では環境や生産者、その周辺に暮らす人々、生態系への影響も考慮して、さまざまな取り組みを行なってきました。
オーガニックコットンの生産過程を知り、原料の大切さに対しての思いを深めることは非常に重要と考え、2014年には商品開発者が実際に世界各地の産地へ訪問し、シーズンにより種付けや収穫を経験しています。
こうした取り組みが身を結び、2018年にほぼすべての衣料品の綿がオーガニックコットンとなりました。2019年からは商品名についていた『オーガニックコットン』の表記さえ外しています。
オーガニックコットン畑を広げていくために、2021年にはTシャツ1枚の販売につきオーガニックコットンの種2つをインドの生産農家の方々に無料で提供する取り組みを始めました。
あたりまえにオーガニックコットンを使用することを実現した私たちは、使う人にもつくる人にもやさしいものづくりを、これからも目指していきます。