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手は美しい。よく働く手には思わず見とれてしまいます。派手な装飾などしない指先こそきれいだと感じている人は少なくないはずです。素肌や素手がきれいであることをうれしく思う気持ちは、天然素材の安心感や、洗いたてのシーツを心地よく感じる気分と似ていないでしょうか。

日本では、玄関で靴をぬいで家に上がります。 その結果すばらしく清潔な生活空間が手に入ります。また、公共空間はとりわけ清潔です。空港の床やオフィスのロビーなどには、寝転がれるくらいきれいな場所もあるほど。海外から帰ると、凹凸が少ない道路を、振動の少ないクルマで静かに走る心地よさが、日本独特であることに気づきます。清楚な空間や隅々まで気を行き届かせる配慮。そこに価値をおく文化が私たちの文化なのです。

たとえば、仕事をするということは、誰かの指図に従って動くということではなく、主体的に価値ある作業を積み重ねること。掃除をする人も、工事をする人も、料理を作る人も、なすべき仕事を完遂するという暗黙の精神をたずさえて働いています。掃いたり拭いたり、そろえたり。時間が来たからといって作業を放り出したりはしません。だから日本から生まれるものや空間は、やさしくてきれいなのです。

140年ほど前に、西洋の文化を受け入れることによって日本の文化は混沌に直面しました。今でもその大きな混乱は続いています。ですから私たちのまわりの環境は、必ずしも理想的な状況とは言えない矛盾に満ちています。また、アジアにおける経済の爆発と、低コストを求める競争によって生活文化の質はさらに混迷の度を深めているかもしれません。そうであればこそ、私たちは繊細で、簡素で、丁寧で、清潔な自分たちの文化の中に確かにある美意識を「資源」として再確認する必要があるのです。

無印良品は2007年の末、ニューヨークに北米一号店を開きました。特別な店舗ではなく普通の無印良品です。さしたる宣伝も行なっていませんが、現地では大きな反響を生み、好意を持って迎えられました。無印良品としては喜ばしいことですが、評価は単に無印良品だけではなく、その背後にも向けられています。普通の無印良品やその製品が世界の人々に注目される理由は、私たちの暮らしの基本、つまり簡素ながら配慮のゆきとどいた日本の美意識が、世界の人々に共感されはじめているからです。

世界の人々は今、気づきはじめています。安く生産され、形だけのブランディングで味付けされたものを手にしても幸せにはなれないことを。古くからの産地が歳月を重ねて生み出したものだから、それを手にする人に、使いやすさが伝わります。生活文化の中に蓄えられてきた美意識が、ものや作法に宿っているから、人はそこに豊かさを読み取り、充実や幸福を感じるのです。

無印良品は単なる製品の集まりではありません。それらは生活の隅々までじっくり考え抜いた気配りの集合体。本当に大事なことを簡潔にやさしく体現したいと考えています。厳しさが続く世界だからこそ丁寧に、そしてやさしく。