研究テーマ

シートベルトをしていますか?

みなさんは車に乗るとき、シートベルトを締めていますか。いまや運転席や助手席に座る人のほとんどがシートベルトを着用する時代になったそうです。でも、意外と忘れがちなのが後部座席のシートベルト。とくにタクシーやバスに乗るときなどは面倒なので締めない人も多いようです。今回は、事故が起きたときに生死を分ける、シートベルトの着用について考えてみました。

シートベルトの着用率

まず、どのくらいの人が車に乗るときシートベルトをしているのでしょう。JAF(日本自動車連盟)と警察庁が2016年に行った調査によると、運転席の着用率は一般道で98.5%、高速道で99.5%とのこと。また、助手席も一般道で94.9%、高速道で98.0%と、ほとんどの人がシートベルトを着用していました。ところが、後部座席となるとぐんと数字が下がり、一般道が36.0%、高速道が71.8%だったとか。さすがに高速道路は身の危険を感じるためか、着用する人が増えますが、それでも運転席や助手席に比べると低い割合にとどまっています。
後部座席の装着率が低い理由として考えられるのは、シートベルトを外しているときに鳴る警告音が鳴らないこと。現在、この装置が義務づけられているのは運転席のみで、助手席に付いている車種もありますが、後部座席はほぼ対象外です。そこで国土交通省では今年の6月に道路運送車両法にもとづく保安基準を改定。これまでの運転席のみから、後部座席を含む全座席に拡大し、2020年9月以降に発売される新車から警告灯と警告音の搭載を義務づけたそうです。これからは後部座席でもシートベルトをしていないと、「ピーピー」と警告音が鳴るようになるのです。

シートベルトの威力

国土交通省がシートベルトにこだわるのは、それなりの理由があります。事故が起きたときの死亡率がだんぜん違うからです。2014年に警察庁が発表した全国調査では、シートベルトをしていない人の死亡率は、している人のなんと14倍以上にのぼっています。特に後部座席の場合は、シートベルトをしていないと車外に放り出される危険が4倍にも高まるとか。衝突の瞬間、体が浮いて前方に飛んで行き、フロントガラスを突き破って車外に飛びだしてしまうのです。また反対に、体が強く引き戻されるときに後方のガラスを突き破って放りだされるケースもあります。ちなみに車外放出されて死んだ人の割合を見ると、シートベルト非着用者は着用者の15倍にも達します。シートベルトは後部座席からの車外への飛びだしを防ぐうえ、万一飛びだした場合にも死亡率を下げてくれるのです。

交通事故死者数の変化

かつて日本には「交通戦争」という言葉がありました。自動車の急速な普及にともない、交通事故の死者数がうなぎのぼりに増えたのです。そのピークは1970年に訪れ、年間の死者(事故発生から24時間以内に死亡)数はなんと「16,765人」に達しました。日清戦争の日本人の死者が13,000人ほどだったといわれていることを考えると、まさに「戦争」と呼ぶにふさわしい事態でした。
ところが、この年を境に交通事故の死者数は少しずつ減りはじめます。要因はいろいろ考えられるようですが、そのひとつにシートベルトの着用があることは間違いなさそうです。シートベルトは交通事故の死者数が最大に達した1970年の翌年の1971年に、高速自動車道と自動車専用道で、前席(運転席・助手席)に限ってですが、着用が努力義務となりました。その後、自動車メーカーに対して助手席や後部座席のシートベルト設置が義務づけられ、また、1985年には高速自動車道・自動車専用道で前席(運転席・助手席)での着用が罰則付で義務化されます。さらに、車の安全性能の向上やエアバッグの普及などもあり、2016年の交通事故死者数は、ピーク時の4分の1の「3904人」にまで減りました。シートベルトをしていれば絶対安全とは言えませんが、少なくとも命を守る確率を高めることはできるのです。

後部座席に座るとき、面倒くさいということもあって、ついシートベルトをはずしがちになります。とくに一般道を走るときや、タクシー・バス等に乗るときに着用しない人が多いようです。昨年2016年の1月に、軽井沢で大きなバス事故が起きました。乗員・乗客41人のうち15人が死亡するという痛ましい事故です。このときほとんどの乗客がシートベルトをしておらず、死者のうち少なくとも2人は車外に放りだされて亡くなったそうです。「衝撃でシートベルトが外れた可能性もあるかもしれないが、しっかりとしていれば救えた命や防げた怪我はあるだろう」と消防関係者は悔やむように語ったそうです。

自動車を運転している限り、事故を防ぐことはできません。自分が注意していても、相手の不注意で巻き込まれることもあるからです。でも、そんなとき、シートベルトをしていれば、助かる命もあるのです。特に乗用車の後部座席、タクシー・バスなどの公共の車に乗るときは、ちょっと面倒でも、シートベルトを着用するように心がけてみませんか。ほんの一手間かけるだけで、大切な家族の命を守ることができるかもしれません。
車に乗るとき、あなたはシートベルトを着用していますか?

参考サイト:全ての座席でシートベルトを着用しましょう|警察庁Webサイト

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