イベント採録
「耐震住宅トークセッション ~耐震住宅100%を目指す試み~」

※このレポートは、2014年8月23日に無印良品の家 MUJI新宿 家センターで行われた、耐震住宅トークセッションの様子を採録しています。

田鎖
「耐震性がない」と断定できる建物が、実際に約1150万戸あります。総戸数約4700万戸のうちのこれだけあるということは、4家庭のうち1家庭は地震で潰れる家ということになります。そして最も危険と言われている、耐震性が不十分な木造の建物が約1000万戸あります。
 
田鎖
「耐震性がない」と断定できる約1150万戸のうち、約1000万戸は木造の建物だというのが、国土交通省のホームページに出ています。こういうネガティブな話っていうのは、報道もされにくいですね。特にハウスメーカーさんとかはあまり言いたがらない数字ですから、あまり皆さんの目にふれることがないと思います。

皆さんご存知と思いますが、1981年というのが耐震にとって凄く大事な年です。この年よりも前は、鉄筋コンクリートでつくった家、というよりマンションですね、そこには、耐震基準というものが整備されていなかった。家のつくり方はキチッとあったのですが、「ここまでいったら震度5以上でも大丈夫ですよ」っていう基準が当時まだなかったので、かなり優秀なゼネコンさん、または構造技術者の建てた建物以外は、耐震性能がないものが多いです。ただ、この年から後に建てられたものは、かなり丈夫です。建物としては「免震」「耐震」「制震」いろいろな技術がありますので、鉄骨造については、日本は世界で類を見ない耐震構造を持っています。

ここで大きな問題、木造住宅については2000年まで耐震基準についての法改正がありませんでした。基準がなかったために、2000年から後でないと耐震性が保証されていない木造住宅がたくさんあります。耐震性がある建物もあるので、 ハッキリとは言えない状況が続いています。さらに、現在は国の基準で決まっていますが、2000年以前は耐震性のある建物をつくらなきゃいけないことは義務化されていなかった、木造住宅は任意だったんです。持ち主さんが望めばそうしてあげてください、というルールなので、実はこれが木造住宅の耐震化の進まない主な要因です。

ここまで事実のご紹介という感じになっていますが、「じゃあ地震で壊れない家ってどうつくればいいの?」ということで、私の著書「家、三匹の子ぶたが間違っていたこと」、「三匹の子ぶた」の童話から皆さんに質問します。
「わらの家・木の家・レンガの家、最も丈夫な家はどれでしょうか?」
一般的には、レンガの家が丈夫だと思いますよね?
では、「地震に強い家はどれですか?」っていう質問にすると、ちょっとみんな考えると思います。

実は、地震に一番強い家は「わらの家」です。あとで構造計算のところでもすこし解説しますけど、レンガって積んでいますよね? だから揺れたら倒れて危ないです。「三匹の子ぶた」はイギリスの童話なので、イギリスでは、大地震が起きたことがほぼありません。
そうすると、建物に対する敵はなんでしょう? 「風」です。だから童話では、オオカミさんは息を吐いて、一生懸命「わらの家」を壊すんですね。だからレンガの家が推奨されて、歴史的にもヨーロッパではレンガとか、礎石造が残っています。日本では地震が多いから、礎石造の建物は残っていないんです。

そして、今日は皆さんにコレを伝えにきたわけですが、建築基準法にあるタブーとも言えること、「木造住宅は構造計算をしていません」。これを言うたびにいろいろな人に報復されるんですけど(笑)、木造住宅は構造計算を義務づけられていないです。
 
田鎖
木造の場合、建築基準法20条には、構造計算を必要とする建物が書いてあって、3階建て以上の建築物、延べ床面積が500㎡を超える建築物、高さが13mを超える建築物、軒が9mを超える建築物って書いてあります。
皆さんが住んでらっしゃる木造住宅でこれに該当するものは、3階建ての家以外にはないと思います。500㎡以上の家に住んでいる方なんて、このなかにいないですよね。高さ13mを超えるっていうと、だいたい清水の舞台くらいの建物になります。つまり、2階建ての木造住宅は、建築基準法にちゃんと当てはめていくと「構造計算しなくていい」となるようにできています。
そして、学者さんが建築の現場の方に構造計算してくださいって言うと、「伝統工法がわからねえヤツに語る資格はない」とか言われたりして、「木のことがお前らにはわかんねえだろ」とか、こう言われてしまうワケです。昔の伝統工法って、柱の直径が1mくらいだったりします。清水の舞台でも、こんなに大きいです。いまの木造住宅は柱が細いので、計算しないと本当に危ないです。
 
田鎖
では木造住宅が耐震性を侵害している理由ですが、建築技術が低いところにいくとたいてい「筋交いいれましょう」っていわれます。確かに、筋交はつっかえ棒にはなります。これも、構造的にちゃんと解析して正しい位置に入れれば、耐震性は上がります。この前提となるのは構造の設計なので、これを何枚も何枚も入れるっていうのが、いまの木造住宅の設計シーンになっているということです。

ところが、この筋交いを入れる建築基準って、大地震が起きるたびに変わっています。先ほど2000年以前の建物は耐震性がないって言ったのは、木造住宅の筋交いの量は「科学的に実際はこんなに必要」だとわかって、それから免震率とかいろいろなものを考慮していくことに対応したのがこの年です。だから2000年までに建てられた木造住宅には耐震性がないんです。