イベント採録
「耐震住宅トークセッション ~耐震住宅100%を目指す試み~」

※このレポートは、2014年8月23日に無印良品の家 MUJI新宿 家センターで行われた、耐震住宅トークセッションの様子を採録しています。

「安心・安全な住まいを提供したい」。 これは建築に関わるすべての人の想いです。
もちろん、無印良品の家も「永く使える、変えられる」家を実現するために、長期優良住宅の認定基準に標準仕様で対応しているだけでなく、耐震等級ほか、さまざまな認定等級をクリアしています。しかし、現在の建築基準法は、木造2階建て以下の住宅に関しては、「構造計算」をしなくて良いという例外を認めています。その代わりに木造住宅は、ある一定量以上の耐力壁を設ける基準を守らなければいけません。「壁の量」で家の安全を決めるということは、一見、たくさんの柱や壁がある家が強そうに見えるものですが、使用する木材の品質や構造を組上げる接合方法は、現在のところ各社まちまちで、本当の強さを科学的に検証するレベルに至っているとは言えないのです。
このトークセッションのテーマは、「耐震住宅100%を目指す試み」。
建築構造計算の専門家であり、「耐震住宅100%」実行委員長の田鎖郁男氏をむかえ、日本の家の耐震基準について、みなさまと一緒に考えていきたいと思います。

<スピーカー>
田鎖 郁男(たくさり いくお)

田鎖 郁男(たくさり いくお)
株式会社NCN代表取締役社長。「耐震住宅100%」実行委員長。
1997年にSE構法が建築基準法第38条、建設大臣認定取得(第一次)。
同年、登録工務店制度によるSE構法の販売を開始。2002年、SE構法専用構造計算プログラム「木質構造計算プログラムWOLF-2」が木造では日本で初めて国土交通省大臣プログラム認定を取得する。
著書に「家、三匹の子ぶたが間違っていたこと」(ダイヤモンド社/2007年)、「そうか、こうやって木の家をたてるのか。『200年住宅』と工務店選びの知恵」(小学館/2011年)など。
田鎖
ご紹介にあずかりました、田鎖と申します。ここにいま「100」って書いてあるバッチがございまして、これは「耐震住宅100%を目指そう!」という取り組みの実行委員長もしております。まず、僕がなんでこんな活動をするかということをご紹介したいと思います。

今、実は日本の建物って、あんまり耐震性がないのです。担保されていない建物がたくさんあります。無印良品でも2007年に企業メッセージを発信していますが、家のつくり方って建築学校に行かない限りなかなか教えてもらえません。
 
田鎖
上の世代から教わることもあるかもしれませんが、わずか50年の間に日本人の住まい方、家族のかたちも変化し、ご近所やコミュニティのあり方もすっかり変わりました。昔は土間でごはんを炊いてたのが、現在は生活の場がリビングになったりキッチンになったり、昔と全然違う生活スタイルになっていてき、家のつくり方もすごく大きく変わってきてしまいました。さらに、ハウスメーカーに行くと、「なんとか工法」とか「なんとかシステム」とかを勧められて「絶対に大丈夫ですよ」なんて言われるので、建築の難しいことは覚えられないし、確認のしようがないままになっていきます。ですので、こういったセミナーで、皆さんにできるだけフェアな情報をお伝えしていければと思っています。

僕は全国の工務店さんといろんな場所に行って、とにかく日本の住宅の耐震化を進めていこうという活動をしています。「SE構法」というのも開発しており、構造の設計や耐震設計は、累計1万5千戸くらい手がけています。多分、現存する木造住宅の構造設計事務所としては日本最大か、たぶん世界最大だと思います。
1995年の阪神淡路大震災の時にこの活動をスタートし、僕はボランティア活動から始めました。あの時の地震の揺れはたった10秒でした。その後、避難体制がなってなかったとか、救助体制はどうだったとか、政府はたくさん非難をうけましたけど、この10秒間はなんにもできなかったんですよ。建物は10秒間で壊れて、避難所は撤去までに5年かかり、最後の方が避難所から退去するまでに約10年かかりました。たった10秒間で、それだけの大きい被害がでたのです。
「地震がおきたらガスを止めなさい」「ブレーカーを落としなさい」「窓を開けなさい」「避難路を確保してください」と言いますが、大震災のときって、例えばパソコンとかテレビとか、飛ぶんです。壁に穴あけるくらいの勢いですっとんでいきますので、その中でブレーカーを下ろしている時間はまったくないです。だから、「地震が起きたら何も出来ない」と思ってください。東日本大震災の場合は、ゆっくりした地震が長かったので色々と対応できたのですが、直下型の地震の場合は飛びますから、まず立てません。だから「いかに動かずにいられるようにするか」が大事ですね。

一番の地震対策は、安全な建物の中にいることです。家具とかは、もちろん飛ばないようにしておいてください。今日来ていただいた皆さんが、もし今日来て良かったと思うとすれば、そのことです。おうちに帰って、地震が来た時のために家具の固定を考えてください。「揺れた瞬間になんにもしない」という生活をすることが、地震に強いということだとご理解頂ければと思います。だから、耐震性のある建物に住んでください。
 
田鎖
ここで問題ですが、100年に1度と言われる大震災、地震で千人以上の方が亡くなるような地震が、何年に1回くらいの頻度で起きていると思いますか?
正解は、「10年に1回」です。1891年の濃尾地震は7000人もお亡くなりになった大地震ですが、そこから2011年の東日本大震災までの120年の間で12回も地震がきています。

こんなに人が死んでいるのに、いまだに住宅の耐震性が担保できないという日本は絶対におかしいと思うわけです。ただ、日本って地震がありすぎるかわいそうな国とも言えます。世界の中で、1番地震に遭っている国が日本です。地球の400分の1しかない土地に、地殻エネルギーは地球全体の10分の1が詰まっています。例えば、マグニチュード6以上の地震が世界で何回起きているかということでは、なんと20%が日本でおきています。だから防災も耐震も、世界から学ぶことができないです。

すごくあおるような話しになってきて恐縮ですが、国が平成15年に、住宅の耐震化をしなきゃいけないということで調べたところ、耐震性のない建物がまだこれだけあるということがわかりました。