無印良品 キャンプ場

特集 | 2021 SUMMER
五感を使って味わいたいから

やっぱり、外

あそんだ人◯中島英摩/久保田朋和&清藤千秋

画面越しの絶景に感動はするけれど
そこに吹く風や温度や匂いや
たどり着くまでにかいた汗や
翌日の筋肉痛や、
そういう実感が恋しいから、
改めて思いっきり外とたわむれようと、
私たちは山を走ることにしました。
久々にその懐を借りて過ごしてみると、
やっぱり外ってやつは、
一筋縄ではいかない相手ではあれど
ともに過ごすのに、
最高に気持ちいい相棒でした!

今回山にやってきたのは、9年ほど前にトレイルランにハマったというエマさんと、街ランはしているもののインドア派というボタさん&千秋さん夫妻。到着後、まずはゆっくりコーヒーを淹れ、明日登る山を眺めながらエマさんのトレイルラン体験談を聞く。
日が暮れる前に、明日走るコースを歩いて下見。地面には落ち葉が積もり、くつ底を通してふかふかとした感触が伝わる。歩きながら、さまざまな植物や生き物に注目。少し歩いただけでも、山の自然に魅了される。
朝を迎えると、山は霧に包まれ空いっぱいに灰色の雲。時折、雨もぱらつく中、身支度を整え、森の入り口へ向かう。入念に準備運動をしたら、木々のトンネルをくぐって走り出す。最初は一歩一歩を着実に。足をトレイルコースに慣らしていく。
森を抜け、湖畔を巡り、いよいよ山に入るとコースは厳しい上りに。「上りは歩いても大丈夫!腿に手を当てながら上ってみて!」と、エマさんがコツを伝授。初トレイルランの二人は、「キツい~!」と言いながらも、楽しそうに前に進む。雨はいつの間にか上がった。
声をかけあいながら上がっていくうちに、木々の間から光が差してきて、頂上に着く頃には気持ち良い青空ものぞいた。ミニチュアのようなコテージやテントが眼下に見える。それぞれ持ってきたお菓子やフルーツなどの"ごほうび"で休憩。
ここからは下り。「下りの時はつま先に重心ね!」と、勢いよく下っていくエマさんに、二人も果敢に付いていく。上った分、スピード感を味わえる下りが面白い。「この下りのためなら、キツい上りもがんばれる!」と、二人はトレイルランの虜になりつつある。

山を走ったら、外への扉が開いた

あそんだ人◯中島英摩/久保田朋和&清藤千秋

*文中呼称:エマ=トレイルランナー、ボタ(夫)&千秋(妻)=インドア派シティランナー

エマ:初めてのトレイルラン、お疲れ様でした! 見て、あの山のてっぺんまで行って帰ってきたんですよ!

ボタ:やー、やれるもんですねー! 自分でも驚きです。

千秋:山の麓を走って、山を登って、そして下って......、普段の街中を走るジョギングだったら飽きちゃう長さ。でも、今日はあっという間でした!

エマ:高さはスタート地点から頂上まで220メートルくらいかな。

千秋:緩やかに登っていくんだろうと思っていたから、前半の急勾配の登りは本当にきつかったけど、徐々にジェットコースターみたいにスピードを体感できる下りの楽しさに気づいて、後半は「そのためなら!」と、登りもがんばれました。

ボタ:下りは「もっと長くていい」って思うくらい楽しかったなぁ。

エマ:二人とも、初めてなのに! 下りって、最初はどうしても怖いものだから、なかなかスピード出せないんです。

ボタ:僕は最初ちょっと怖かったけど、普段そこまで運動していない千秋が、がんがんエマさんに付いていくから、それ見てたら「負けられない!」って思って(笑)。

千秋:エマさんが手を上下に動かしながら下っていくのが楽しそうで、付いていきたくなっちゃって。

エマ:手ね! バランスを取ってるの。

千秋:エマさんが、「足元だけでなく1.5メートル先も見て」って教えてくれたから、頭も使っていた気がします。

ボタ:そうそう、どこに足を置くのか、動きながら瞬時に判断していかないといけないから、頭も感覚もフル回転でしたね。すごく集中していたと思うし、どんどん研ぎ澄まされていく感覚があったなぁ。

エマ:普段、都会では情報が溢れていて、その中に身を置いて何となく過ごしているけれど、山の中にいると五感の全てを使って、情報を自ら積極的にキャッチしていかないといけないですよね。それが山に入る面白さだなぁって、ボタさんと千秋さんと走って改めて感じていたんです。開放感と集中って相反するような気がするけど、その両方を同時に味わえるのがトレイルランかもなぁ、って。

ボタ:僕はそもそも山を登るっていうこと自体、小学生以来だったかも。

千秋:私もそうかも。自然のあるところに行くことはあっても、毎回、景色として眺めているだけですぐに飽きちゃっていたから、てっきり私はアウトドアに興味の持てないタイプだと思っていたんです。でも、今回トレイルランを通じて山に入る、山に触れるっていう体験をしたら、想像以上に楽しくて。

エマ:二人とも走ってる最中も楽しそうだったから、インドア派って聞いていたけれど、そうは思えなかったですよ(笑)。

千秋:雨上がりのしっとりとした空気も、汗をかいた肌に涼しい空気が触れてひんやりするのも気持ちよくて。あと私、虫が大嫌いなんですけど、なぜか平気だったんです。エマさんがいろんな植物や生物を見つけて、その度にうれしそうに解説してくれたのも楽しかったし。

エマ:キノコとかカタツムリとか、一見グロテスクな植物とか、山の中で出会うと可愛く見えるんですよね。

千秋:エマさんが見つけて教えてくれたギンリョウソウ* きれいでしたね! 知らなかった不思議な植物に出会えたのもうれしかったです。

*ギンリョウソウ=樹林帯にある白っぽく透き通るような植物。腐生植物と言って葉緑素を持たず光合成を行うことができないので、菌類に共生していること。別名ユウレイタケ。

ボタ:なんか、山に入ることで普段と感じ方が変わるのは面白い体験でしたね。途中休憩の時にエマさんにもらって食べたミニトマトのおいしさは忘れられないですし。山頂で食べたプラムも、疲れた体に染み渡ってうまかったなぁ。

エマ:でしょ! 身体も疲れて喉も乾いているから、ジューシーさと程よい甘さがちょうどいいんですよね。

ボタ:今まで登山する人の気持ちがまったく分からなかったけど、今なら分かる気がします。頂上からのあの景色を見たら、疲れも吹っ飛ぶというか。「そうか、こういうことか!」と。

千秋:頂上が近づいてくるにつれて晴れてきて、木々の間から光がさしこんで山の中が明るくなってくる様子も印象的だったよね。登り始めは小雨だっただけに、頂上で天候が良くなって青空まで見えたのには感動しちゃいました。

エマ:もしかしたら二人はこれから、都会のアスファルトの上をジョギングするだけでは、ものたりなくなっちゃうんじゃないですか? 山ほどハードじゃなくても、土の上を走れるような場所やハイキングコースって都会の近くにも意外とあるので、是非走ってみてほしい。

千秋:そうなんですね! 休日のジョギングは、土の上をコースにしてもいいかもね。あと、旅に行くときに、アトラクションとしてトレイルランを入れるとかもやってみたいね。

エマ:近くに"ごほうび"を見つけておくと、やる気も出ますよ。下山後に寄れる銭湯と町中華とかね!

ボタ:それ最高だなぁ。

千秋:いつもジョギングの時は手ぶらだったけど、ちょっとした買い物できるように、小さいザック背負って行くのもいいね。

ボタ:今回、こうして新しい世界を知ることができて、明日以降の自分がちょっと楽しみです。今回の体験で自分の中で感覚の解像度が上がったというか。休日にどんなことをしたくなるのか、外で過ごす時に何を感じるのかとかも、変化がありそうです。まぁ、同時に明日の筋肉痛は少し恐ろしいですけどね......(笑)。

エマ:山で遊ぶようになったら、筋肉痛もクセになっちゃうかもしれませんよ。だって、その痛みは山と思い切りたわむれた証拠ですから!

なかじまえま(写真中)1984年京都府生まれ。アウトドアライター。トレラン歴9年。国内外のレースに参戦。三度の飯と山が好き。くぼたともかず(写真左)1980年神奈川県生まれ。PR会社勤務。趣味はランニング。運動後に消費以上のカロリーを摂取してしまうのが悩み。せいとうちあき(写真右)1992年千葉県生まれ。編集ライター。趣味は、読書とお酒とおいしいもの。筋金入りのインドアだが、夫のボタさんの影響で週1程度のランニングはしている。

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