無印良品 キャンプ場

みんなの外あそび | No.158
人と出会い、暮らしを知る

カレーを通してつながる世界

樋口実沙/カレー活動家

十一年間勤めた会社を辞めた後、バングラディシュに向かった。目的はカレー。それも自分でとった魚でカレーをつくるんだ。

きっかけは約十年前に遡る。インド即興料理旅行を綴った本に「フィッシュカレー」なるものが紹介されていた。地域によって異なるという魚料理。想像もできないカレーの世界があると知った。以来、仕事の合間を縫ってインドをはじめスリランカ、ネパールなどを訪ね、ついに今回、バングラディシュのダッカに降り立った。

かのガンジス川はインドからバングラディシュを渡りベンガル湾に注ぐ。それを含めた三つの大河がバングラディッシュの人々の生活とともにある。その恵みとして、様々な種類の新鮮な淡水魚が市場に並び、日々活気ある人々でにぎわう。

バングラディッシュでは釣りではなく網漁がメイン。今回は、現地の知人の紹介で漁師と一緒に網をひかせてもらうことになった。四月のダッカは気温35度近く、炎天下の作業は朝からお昼を過ぎても続く。網は重く、気が遠くなる。途中で漁から脱落した私を、漁師の仲間が近くの食堂に案内してくれて調理場まで見学させてくれた。後から魚を持った漁師もやってきてうれしそうに私に見せてくれたのは、日本でいうキノボリウオやライギョなど。バングラデシュでは食堂などでも見かける一般的な魚で、小ぶりでも身がしまっていて人気がある。

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その後、知人宅でプロに教わりながら、新鮮な魚はマスタードオイルで素揚げしたあと、素材を生かし少ないスパイスでシンプルなカレーにした。
シャバシャバでバングラディシュのお米に合う、今まで味わったことのない尊いおいしさだった。

バングラディシュの平均月収は日本の約10分の1以下と言われ、漁師をはじめとする労働者はさらにそれを下回ると聞いた。目も眩む暑さのなか、その日暮らせる程度の魚をとって、川の近くの簡易小屋で慎ましく生活をしている。しかも雨季には川が氾濫し、彼らの生活を脅かすことさえある。カレーを通して旅をしなければ知り得なかったこと、出会えなかった人々ばかりだった。会社を辞めて漠然と考えていたやりたいことが、いくつもの湧き水から小川ができるようにつながっていった。

私はカレーを通して人や町、そして世界をつなげたい。
カレーをめぐる旅を重ね、私はようやく思いの源流にたどりついた気がする。

ひぐちみさ|1985年広島県生まれ。kate spade new york ブランドでの11年の実務経験を生かしEarth Companyで社会起業家の支援やソーシャル研修などのマーケティングを行う。「カレーを通して世界をつなぐ」をライフワークに、アジアや南米を旅しスパイス料理を学び紹介している。@higumi33

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