みんなの外あそび | No.151
出張にはウェアとシューズ

知らない街でランニングする

岡本弘毅/会社員

「出張に行ってきます」ということになったら、同行者にはグルメ情報を調べさせ、自分はグーグルマップを眺める。走るコースを吟味するためだ。

ランニングを始めたのは、もう10年以上も前。発売されて間もないnike+を使ってみたかったからだ。その頃は年間1000km近くを走っていた。

それが数年前から、仕事が変わったり新たな趣味が登場したりして、走る時間は減る一方に。走ることすら忘れ始めた頃、仕事の出張の際に、ふと思い立って、出番が少なくなったシューズを持っていった。この行為が、それまでのランニング体験を変える「出張ラン」の始まりだった。今では、出張支度はランニングシューズとウェアをバックパック詰めることから始まるといっても過言ではない。もはやランニングのための出張にも思えてくる(思ってません)。

旅行や出張の限られた時間での「出張ラン」は、ひとりで行きたいところに行ける唯一の時間であり手段だ。ルールは、早朝に宿泊地から、重複しない一筆書きのルートを約10㎞、1時間程度で回れるようにすること。計画を練るうちに本来の目的=出張を忘れそうになる(忘れていません)。

出張ランを始めて以来、相棒のシューズと国内外を走り回った。どこを走っても自然を感じる北海道。誰もいない時代劇のセットを走っているような気分になる町並みになる京都や金沢。ニューヨークは柄にもなくセントラルパーク。シカゴやスペインのビルバオは走りながら建築ツアー。台南ではマラソンの国際大会に遭遇(知らずに先導車よりも前走っていたため、先頭ランナーと間違われてすごい声援を受けた)。等々、誌面が足りないので書ききれない。

特に初めての街では、ランニングというスピードで、街の喧騒を楽しみ、ログを取ることさえ忘れ、路面の起伏を足で感じることで、ガイドブックではわからない魅力を見つけることが喜びとなる。もう、旅先でないと走りたくなくなってきている。

さて、次の出張はどこだろうか。

おかもとひろき|1976年千葉県生まれ。剣道四段。建築を学び、広告関連の仕事に就き、折角なので両方楽しめる仕事を模索中。器用貧乏で折角主義。最近、スノーランというスポーツに興味が出てきたので、スノーシューをスマートに持って、降雪地への出張の機会を狙っている。まだ話は来ない。

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