みんなの外あそび | No.118
究極のガーデニング

3坪の庭に里山を再現する

谷口昭平/エンジニア

3年前に購入した築20年の中古マンション。当時2歳の息子が「2階から落ちないように」と1階の部屋を選んだら、思いかけずに3坪の庭がついてきた。

果たしてその実態は、35年のローンを背負って眺めるには余りに悲惨すぎる「痩せた表土・疲れた芝・全力の雑草」の3拍子が揃い踏んだ「ブッチギリの荒地」であり、保水性ゼロの粘土質の土壌をわずか10㎝掘るだけで、拳大のセメント塊やタイル片などの工事廃材がザクザク現れる、工事廃材の墓場だった。

転居から2年。完熟腐葉土と発酵油粕による「強引な土壌改良」と、繁殖力に優れる廉価な多年草の「グランドカバー絨毯爆撃」によって、見事に庭は蘇り、次いで行われたウッドデッキと洋式七輪の「拡張突貫DIY」を経て、草木を愛でながらバーベキューが楽しめる水準にまで、外あそび環境が整った。「ベランダから鹿が撃てる」という空前絶後の「事実上の限界集落」で育った自分にとって、3年目以降の課題は、必然、「この庭に故郷の山を再現すること」になった。

まず、「蓮池」と称して、水蓮を仕込んだ中鉢を庭に埋め込み、近所の池から微生物がドッサリ入った「ドドメ色の水」をぶち込んで生物濾過のサイクルを整え、初回設定後の世話は自然に任せてメダカやタニシの繁殖を楽しむ「閉じた生態系=ビオトープ」。

また、息子と共に、山の倒木下の腐葉土から採取してきたカブトムシの幼虫を、朽木(腐葉土より栄養価が高い)と一緒に混ぜ込み、虫塚を作って27年ぶりにカブトムシ育成もリスタートした。腐葉土塚の水分管理とカラスの食害防止用のシート管理を続けることで、彼らは勝手に巣立っていく。

転居から4年、今年からは今まで片手間でやってきた「家庭菜園」に集中しよう。日照量の一番多い「一等地」にはプランターを置いて、トマトやヘチマの苗を植えよう。池の向こう、庭の奥、日照量の最も少ない「影の一等地」に鎮座する「カブトムシ入りの腐葉土塚」には、塚に寄り添う様に「シイタケの原木」を配置して、故郷の里山を再現するのだ。

土は、楽しい。
たとえそれが3坪の庭でも、たったひとつのプランターでも。

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谷口昭平|1978年生まれ。少年期は伊豆山中にて、野生のイノシシ・シカに囲まれながら過ごす。2010年に(株)松風を創業、Windows安定高速化ソフトウェアの開発・設計を兼任。プライベートでは「坪庭の野性。時々狩猟」をテーマに庭作りに燃える。

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