みんなの外あそび | No.067
親たちが楽しんでいれば何かを感じる

農作業はアウトドアの原点

元石泰博/株式会社地球丸 勤務

本職の農家からみればまったく「ママゴト」なので恐縮だが、田んぼに通って9年になる。田んぼといっても場所は横浜市の住宅地にある公園の一部。ボランティア登録し、指導員のもと、1年間おなじ田んぼで稲を育てる。
木の電信柱に裸電球の街灯、炭焼小屋。かや葺きの古民家から、かまどの煙が立ちのぼる。懐かしい谷戸の風景が保存されているこの公園に、訪れる人は少なからずおどろく。市街地でこの環境を維持することが、どんなに貴重で大変なことか。

もともと、娘の通う幼稚園がこの公園の田んぼを借りていたのが始まりで、子どもたちの卒園後は幼稚園仲間たちでグループをつくり、田んぼの活動を続けた。
初春の田起こしから始まり、代掻き、田植え、夏の雑草取り、案山子づくり、稲刈り、はさ掛け、重労働の脱穀、皆で祝う収穫祭、炊き出し、餅つき、そしてまた田起こし。1年サイクルで農作業を体験する。

始めは『お米を大事に』と、いわゆる食育のつもりだった。
しかし月に数回とはいえ、貴重な休日を返上して9年も続けているのは、農作業が楽しいコトこの上無いからだ。
娘が中学生になった時、さすがに彼女はもう来ないかなと思ったのだが、「続ける」と言い出したのは、意外にも娘からだった。

子どもたちの多くは、公園に来るや消えてしまい、昼ごはんまで帰らない。でも田んぼに人手が必要なときは、ちゃんと手伝ってくれる。それでいい。彼らの、刃物の持ち方使い方、テコの利用、泥田の歩き方、ロープワークなどは初めて参加する大人よりも、安心して見ていられる。『門前の小僧』というやつだ。

スキルはいつのまにか身につく。むりに教えても長続きはしないし、楽しくない。親たちが楽しんでいれば何かを感じて、自ら学んでいく。子どもたちを見ていると、そんな気がするのです。

menu67_img1.jpg

menu67_img2.jpg

menu67_img3.jpg

menu67_img4.jpg

元石泰博|1965年生まれ。横浜市出身 海あそび、山あそびをこよなく愛す。 大人になってから始めたヨットは20年はまりっ放し。 DIY全般が趣味だが、いじり壊すことも多い。出版社地球丸勤務。営業担当。

いっしょに読む