きっかけはパン教室を開いている三星刃物・5代目社長の奥様の疑問から。生徒さんがパンを切るのに良い包丁を探している際に、刃物屋なのに他社の包丁を薦めることに違和感を覚えていたといいます。また、生徒さんから包丁研ぎを要望されることも多くあり、その度に切れ味の戻った包丁に驚かれたそう。

「いくら高価な包丁でも、家庭でケアできなければ使えなくなってしまう…」主婦たちのリアルな声を受けた5代目・渡邉隆久さんの挑戦がそこから始まりました。関のベテラン職人に相談し、自宅で研ぎやすい包丁を目指したのです。

最近の包丁のトレンドは刃を硬くする傾向にあるといいますが、切れ味が落ちた時にその硬さが災いして研ぐことが難しくなるんだそう。そのため三星刃物では刃に適度な硬度の材料を使用し、使い勝手を徹底的に追求した包丁を開発しました。

「包丁は未来を切り開くものだと考えます。1度手にした包丁を一生愛情を持って使い続けてもらいたいと思います」と渡邉さん。また、「和 NAGOMI」というブランド名は、この包丁を使って作った料理を囲む家族が、いつも心優しく健康で、笑顔に溢れるライフスタイルを送れるようにと付けたと話します。

「実は産地で一番最初に工場を海外へ移したのは当社なんです。1度は離れた関でのものづくりをもう一度行いたいと思った時に、周りは協力してくれました。当社のオリジナルの包丁作りは、関への恩返しでもあるんです」。

渡邉さん曰く、関では高齢化が進んでいて、分業制の産地において、どの職人さんが欠けてしまってもものづくりはできなくなってしまうそう。「和 NAGOMI」が国内外で市場に受け入れられることで、少しでも関について知ってもらいたい、そんな想いも込められています。