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金沢駅にほど近い尾張町にあるこの店。加賀百万石、藩政時代の昔より庶民の台所として今も残る近江町市場のそばに位置します。創業当時粟ヶ崎にあった本家から分家して、
1813年にこの地に店舗を構えた古い佇まいは伝統を守り続けている静かな誇りを感じます。
ガラガラっと引き戸を開けると程よい湿気とひんやりした空気。
その中にふわっと味噌の香りが漂ってきました。味噌、醤油、昔使用していた道具などが並んだ店内の奥で、6代目当主 中島寿禧(ひさよし)さんがあたたかく出迎えてくださいました。
良い味噌は厳選された素材から生まれます。主原料は大豆、米、塩。
ここでは国内大豆、特に北海道・十勝産の秋田大豆を。コクがあり味噌のうまみや香りを引き出します。米は国産のこしひかり。強い甘みや芳醇な香りが生まれます。塩は徳島の鳴門塩です。
塩は雑菌の発生を抑え、麹菌の働きを良好にする環境を保つ働きをします。
創業当初より一貫して選ばれた素材を、先代から受け継いだ配合と手間を惜しまない手法でゆっくりと木桶で熟成させます。現代、市場で出回っている多くの味噌は即醸味噌と言われ、1〜3ヶ月間と短い熟成期間で作られるものも多い中、ここでは1年間という時間をかけて作られるのです。
店を抜け薄暗い土間の先にある古い味噌蔵。当主からのお話をこの部屋で伺いました。現在ここで大豆を炊いたり、米を蒸したりと、醸造する前の工程を行っているそうです。直径150cmはあるこの一石釜。石炭の強い火で大豆をゆっくりと炊き上げます。
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中六商店の
味噌蔵の様子
醸造前までの工程はこの中で行います。
写真右が直径150cmの一石釜。
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そして醸造はこの場所から少し離れた共同の味噌蔵で行います。
戦前まで多くの味噌商店が軒を連ねたこの地域。今では共同の工場を持ち、仕込みを一緒に行うそうです。それぞれの特徴を守りつつ、共同で作業できることは力を合わせる。
一見単純なコスト削減が大手にはできない味を守り続ける方法なのですね。
また中六商店で作る味噌には防腐剤を使用していません。
一年熟成している間、石で木桶に重しをします。その重みにより汁があがり、蓋の周りにカビが発生します。これが実は外気からの防波堤になるのです。カビでカビを防ぐ、現代っ子の私には想像しがたい、でもこれも先人の知恵です。
そしてできあがりの見極めが大切。その年の気候の変化を読みながらできあがりのタイミングを計るのです。味噌は作るというより、育てる、親が子供と対話しながら成長を見守り、そして巣立たせる。そんなイメージでしょうか?
「一言でここの味噌の特徴は?」その答えは、本当に一言でした。「守り続けること。」
店内にはほかにも味噌を使った漬け物や、味噌と同じ素材を使った手作りの醤油、梅干し、飴などが所狭しと並んでいます。その中でひと際目を引いたのが、この平たい木の器に入った糀(こうじ)でした。
この糀を使い、今でも珍重されている金沢、冬の伝統料理と言えば「かぶら寿し」です。かぶら寿しはその昔、前田家が江戸、徳川幕府に献上するために作られたものだそうです。
今でもこれを家庭で作るために、この糀を買い求める方も多く、加賀文化が長く愛され大事に受け継がれている様子を垣間見たような気がしました。 |
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さらにこちらのお店では、大豆を持参し、味の好みを伝えるとオリジナルの味噌を造ってくれます。これぞ「手前味噌」!? 素材の善し悪し、熟成の加減を熟知しているからこそできる技なのです。
金沢の食の歴史は、山、海の食材が豊かだっただけでなく、大切に守られた文化があったからこそ成熟したものなのです。かぶら寿し同様に味噌も大事に育まれ守られた、金沢には欠かすことのできない食のひとつです。
金沢にもっと滞在したい気持ちもなきにしもあらずでしたが、とにかく早く食してみたい衝動に駆られ帰路へ。家に戻り早速台所へ直行しました!
今回いただいてきたのは一年熟成味噌(色白)と二年熟成味噌(色濃)の二種類です。
この二種類を最高においしくいただきたい、その一心でお味噌汁をそれぞれ一種ずつ作りました。しっかりとした強いお味噌にはしっかりとしたお出汁を効かせるのがおいしくいただく秘訣とか。
一年熟成の味噌には昆布だしで、シンプルなわかめのお味噌汁。
二年熟成の味噌には鰹だしで豚汁仕立てにすることにしました。
味噌自体に水分が多く含まれ、お鍋の中にいれるとさーっと溶けていきます。そしてその瞬間に芳醇な香りが立ちこめてきました。
早く食べたい!!
今日の夕食はお味噌汁 二種類と近江町市場で買ってきた鰤(ぶり)の押し寿し。
「いただきますっ!」
まずは、一年熟成味噌で作ったわかめのお味噌汁を。やわらかな香りとすっとした喉越しの、品のいい味わい。鼻と口の中が優しさに包まれるようです。
次に二年熟成味噌の豚汁。芳醇な香り、しっかりとした味わい、その後に丸みのある後味が残ります。
どちらも粗野ではない、古き中にもきめの細かい、優しさのある味わいです。
「あ〜、本当にまるい。」そう言いながら、当主のお顔を思い出し、あっという間に全部いただいてしまいました。
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