研究テーマ

ご意見パーク

みなさんからのご意見・ご要望と無印良品からの回答を公開していきます。

「0」よりも大切な「1」歩

左のマーク、どこかで見たことがありますか? 「無印良品のコーヒーや紅茶についていたよ」という方、ありがとうございます。「印」が無いのが無印良品なのに、なぜこのマークがコーヒーや紅茶についているかというと、フェアトレード(公平貿易)の原料が使われている商品だからです。
このマークは北米を除く全世界のフェアトレード認証商品についています。実はフェアトレード・ラベル運動は別々の国で盛り上がり、発展してきました。ばらばらで活動するよりも、各国で協力しあおうと2002年から国際統一ラベルへの移行がはじまりました。
現在では世界60カ国以上でこのラベルの付いた商品が流通しています。国を越え、企業を越えて公平な社会を実現したいというフェアトレード・ラベルの理念に賛同し、無印良品はあえて「印」をつけて商品を販売しています。
くらしの良品研究所ではフェアトレード・ラベルについてもっとみなさんに知っていただきたいと考え、NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン(以下、FL)事務局長中島佳織さんとその活動についてお伝えしていきます。

そもそもフェアトレードとは?

フェアトレード、直訳すれば「公平な貿易」とは、現在のグローバルな国際貿易の仕組みは、経済的にも社会的にも弱い立場の開発途上国の人々にとって、時に「アンフェア」で貧困を拡大させるものだという問題意識から生まれました。「この商品を買えば、貧しい人たちに寄付ができる」というような商品ではなく、「作っている人が人間らしい生活ができる」価格で取引されていることに主眼があります。
「人間らしい」ということにはお金だけではなく、精神的な意味も多く含まれています。「自分たちの意思で、自分たちの必要なことを選択する」、「与えられた機会にたいして、努力をしていく」ということも。でも、彼らにとっては公平な貿易を行うというスタートラインに立つこと事態、難しい場合もあります。そのため、フェアトレードを推進する団体によって様々な考え方やアプローチが存在します。

本当のことは誰もわかってはいない

無印良品は社会の様々な問題について「本当のことは誰もわかっていない」ということを念頭において対応しています。フェアトレードもその1つ。様々な考え方やアプローチのしかたがあって良いと考えています。複雑化したグローバル社会では、どの取り組みが正しいのかという白黒の問題ではなく、どの部分で協力できるかという様々な選択肢が用意されていなければ問題は解決していきません。
その中で、私たちがフェアトレード・ラベルの理念に共感したのは、彼らが「商いを通して社会を変えていこう」と考えているからです。無印良品も常々そうありたいと思っていたからです。
彼らの考えるフェアトレードとは、本当に長期的で対等な関係を作るためには、量がなくてはならない。そのために生産者側はいくつかの農家が連合して、労働条件や環境保護について改善を行いながら、作物を作っていく。その作物をフェアトレード・ラベル認証団体が介在し、誰もが気軽に購入できるスーパーマーケットなどの小売業に紹介し、販売してもらうというしくみです。「フェアトレードは市場原理に基づく効率化を目指しつつ、労働条件や環境保護について持続性のある改善を行っていくためのもの」という考え方がそこにはあります。

静かな強さを持って

日本でフェアトレード・ラベルを推進するFLの事務局長の中島さんを一言でいうと、「静かな強さを持った人」だと常々感じています。
そんな中島さんが幼い時からなぜか気になっていた途上国に行ったのは、大学4年のとき。ケニアの難民キャンプ支援のボランティア募集に応募し、1ヶ月間支援にあたりました。「自分の目で見て、体験した『途上国の問題』は、それまで漠然と感じていたものと大きくちがっていました」とのこと。
支援する側と支援される側の関係。支援するつもりで来た自分よりも強い精神をもっている難民の人々。本当の支援ってなんなんだろう。様々な思いが中島さんにはありました。そして、「彼らの強さを感じ、恵まれない人を支援するということではなく、別の形で関われないか」と感じながら、帰国し、就職し、3年後にまた彼女は難民キャンプに戻りました。

中島佳織(なかじまかおり)

特定非営利活動法人 フェアトレード・ラベル・ジャパン 事務局長

化学原料メーカー勤務を経て、国際協力NGOに転職。アフリカ難民支援やフェアトレード事業に携わる。
2003年~06年、ケニア・ナイロビにて、日系自動車メーカーに勤務。
2007年1月よりフェアトレード・ラベル・ジャパンに勤務、同年6月より事務局長として活躍されています。

根本にある原因はなにか

仕事を辞めて戻ったケニアで、中島さんは難民だけでなく首都のスラム居住者の苦しい現状や貧困の問題について知ることができました。全てのことは実は関連していて、「すべてを切り離しては考えられない」と考えるようになりました。
その後、帰国し、NGOのスタッフになり、得た仕事はタイのコーヒー生産者の支援。現在の仕事に大きくつながる経験でした。生産者を支援するにもタイのコーヒーは知名度が無いため、日本では販路が無く、タイで販路を開拓することになりました。
そこで中島さんは新たな疑問にぶち当たります。「タイでコーヒーショップを開店しましたが、実際に訪れるのは先進国の人たちばかり。例えば、同じタイで働いているのにタイ人のスタッフと日本人スタッフでは給料が全くちがうのです」と、中島さん。支援をしながらも支援の原因にある格差を生み出しているのは自分たち先進国の人間ではないか、そこには構造的な問題があるのではないかと漠然と感じはじめました。「世の中のしくみから変えないと、一時の支援では何も変わらない」と感じながら、中島さんは再度、ケニアに旅立ち、現地で活動を始めました。

貧困を解決する「しくみ」

2003年、3度目のケニアで、中島さんはケニア人の仲間と共に現地で支援活動を始めました。自分たちが働いて得た賃金をかき集め、人々の役にたつ活動に当てるという地道な活動でしたが、あっという間に資金が尽きてしまいました。「やむなく、ケニアにある日本の大手自動車メーカーに就職し、支援を続けました」という中島さん。同時に企業の力を目の当たりにします。「ケニアには難民問題だけではなく、貧困の問題も根深くありました。私は現地のスタッフと一緒に活動しましたが、活動に継続性も無く、効果も感じられませんでした。その一方、私が勤務していた自動車メーカーは300人を雇用し、その人たちの家族に生活の糧を与えていました。企業の活動そのものが良いか悪いかという議論以前に、貧困という現実を前に、確かにそれはすばらしいことでした」と、この時、彼女は「貧困を解決するしくみをつくりたい」と強く感じたそうです。
2007年秋、中島さんは日本に帰り、FLの事務局に入ります。そして、現在、彼女ともう一人のスタッフ2名でフェアトレード・ラベル推進にあたっています。

フェアトレード100万アクション

英国の消費者の82%がフェアトレード・ラベルを知っています。日本では、フェアトレード・ラベル運動そのものの認知度が17.6%だといわれています。全世界のフェアトレードの市場規模に占める日本の比率は1%に満たない状況です。世界的な大不況に直面しているとはいえ、日本の経済状況からみると、この数値はやはり低いといえます。この状況を中島さんは、「歴史的背景、文化的違いもあると思うのですが、日本では人権がからむ問題には関心が低いと感じています。他の民族とのかかわりが少ない国だからかもしれません」と受け止めています。
その一方で、ここ5年ほどの間に大学生をはじめ、若い人たちの関心が増えてきたとも感じています。
日本で今、一番必要なのはフェアトレードを知ってもらうこと。そのために考えたのがフェアトレード100万アクション。「FLO(国際フェアトレードラベル機構)の横のつながりを活かし、各国からヒントをもらいました」と中島さん。日本では5月の1ヶ月間にキャンペーンサイト(PC= http://www.fairtrade-action.jp 、モバイル= http://www.fairtrade-action.jp/m/)にアクセスし、フェアトレードについて自分が行ったアクション登録するという試みを行います。
目指すは100万アクション! 既にドイツでは1日で100万人がフェアトレード・バナナを食べる企画が成功しています。また、先日終わった英国のキャンペーンでは、「身の回りのモノをひとつでいいからフェアトレード商品に変えてみよう」という試みに、2週間で100万以上の切り替えが達成されたと報告がありました。日本も負けてはいられません。

「0」よりも大切な「1」歩

今、世界で、1日2ドル以下で生活している人は20億人。1ドル以下で生活している人は10億人といわれています。後者の約半分をフェアトレードの生産者の対象となる小規模生産者が占めています。
現在、フェアトレード・ラベル運動に生産者として参加しているのは、58カ国746組合、100万人の人々。家族を含めると約500万人の人たちがフェアトレードの恩恵を受けています。貧困層の人々の1%にあたる人々です。「たとえ1%であっても、何もやらなければ社会は変わりません」と中島さん。そして、フェアトレード・ラベルに対する思いについて次のように語ってくれました。「私がラベルに可能性を感じるのは内容がしくみ化されていることと、企業でも消費者でも関心があれば簡単に参加することができる点です。企業と組むことで批判もありますが、社会を変えるためには、社会の一員である企業が参加することは自然だと考えています」。
たしかに、アクションを起こすことで少しずつでも世界は変えることはできる。みんなのアクションが大きな力になるように、無印良品も商品で応援をしていきます。