研究テーマ

ノルディックウォーキング

スキーのクロスカントリーはご存じでしょうか。2本のストック(ポール)を巧みに使って、起伏のある山間コースを滑って(走って)いく競技です。そのスキー板をシューズに履き替え、野山歩きを楽しもうというのが「ノルディックウォーキング」。北欧生まれのこのスポーツ、昨今は日本でも楽しむ人が増えてきました。

そもそもの歴史

「ノルディックウォーキング」が誕生したのは1930年代のこと。もとはといえば、クロスカントリースキーの選手たちが夏場のトレーニングに始めたもので、当初は競技用の長めのストックを使ったハードなスポーツだったようです。その後、少しずつストックに改良が加えられ、さまざまな競技の選手がエクササイズとして取り入れるようになりました。
一方、歩行にポールを使うノルディックウォーキングは、足腰への負担が軽くなるというメリットがあります。そのため北欧では1980年頃から一般の人にも広がって、野山を歩くレクリエーションとして親しまれるようになりました。そして1997年、フィンランドで、ポールを使ったウォーキング手法を「ノルディックウォーキング」と呼ぶことが提唱され、その後わずか20年足らずで、世界40カ国で親しまれ、愛好者数が800万とも900万とも言われる人気スポーツになりました。

すぐれたフィットネス効果

ノルディックウォーキングの魅力は、何といっても気軽に楽しめることでしょう。動きやすい服装に、歩きやすい靴、それに専用のストックがあれば、誰でもその日から始められます。また、両手に持ったストックで交互に地面を突いて歩くため、全身の筋肉をバランスよく使うことができるのです。
医学博士の松谷之義さんの著書「ノルディックウォーキングのすすめ」(財団法人 日本健康スポーツ連盟監修/ぎょうせい)によると、ポールを持って歩くノルディックウォーキングは、全身の筋肉のおよそ90%を使うとか。ポールを使うことによって普段より速い速度で歩くことができ、腕も大きく振るので全身運動になるそうです。
この著書では天理大学体育学部の中谷教授とともに、実験によってノルディックウォーキングの効果を確かめています。ノルディックウォーキングの指導者が400mトラックをポールあり・なしで4周歩き、さまざまな身体データを測定しました。その結果、ノルディックウォーキングをした場合は、通常のウォーキングに比べて、心拍数、酸素摂取量とも20%以上上昇することが分かりました。トラック一周あたりのタイムもノルディックウォーキングの方が30秒ほど速く、歩数は逆に420歩(ウォーキング478歩)と減少しました。その分、一歩あたりのストライド(歩幅)が伸びたことになります。

年齢に応じた楽しみ方

数値だけで見ると、かなりハードな運動のように思えますが、自分なりの楽しみ方ができるのもノルディックウォーキングのいいところ。松谷さんの本によると、20代や30代の人はトレーニングのために、40代以降の人は健康維持のために。また、ポールを使うノルディックウォーキングは転倒のリスクが少ないので、高齢者の散歩や、介護やリハビリにも活用できるとのことです。年齢やご自身の体調に合わせて、無理のないフィットネスが実践できるのです。
屋外を歩くために、通常はポールの先端に金属のソールを付けています。これをゴムのソールに付け替えれば、体育館のような室内でも歩くことができます。とはいえ、北欧生まれの爽快なスポーツ。ここはぜひとも豊かな自然の中を歩きたいものです。

スローウォーク、スローライフ

日本では2003年にNPO法人「日本ノルディックウォーキング協会」が設立され、本格的な普及が始まりました。その後、「日本ポールウォーキング協会」や「日本ノルディックフィットネス協会」なども誕生して、各地にノルディックウォーキングを楽しむ団体やコミュニティが生まれています。
たとえば、神奈川県で活動をしている「三浦半島ノルディックスローウォーキングクラブ」もその一つ。「自然+食+健康」をテーマに、エクササイズと地元のグルメを組み合わせた新しい取り組みを始めています。「自分のリズムでゆっくり歩き、豊かな自然を満喫した後に、三浦半島の食の幸を味わってほしい」。若い人から年配の方まで、あらゆる年齢層の人が三浦を訪れ、ノルディックウォーキングを楽しんでいるそうです。

北欧には普段から,暮らしの中で身近な自然に親しむという文化がありました。その文化から生まれたフィットネスがノルディックウォーキングです。そして、日本にも里山文化のように、自然と寄り添って生きていこうという気風があります。北欧生まれのこのスポーツが、日本人にすんなりと受け入れられ、全国に広がっていったのもうなずける気がします。
スローウォーク、スローライフ。ノルディックウォーキングへの第一歩を、あなたも踏み出してみませんか。

研究テーマ
生活雑貨

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