MUJIキャラバン

半農半X(エックス)という生き方

2013年02月01日

この日本一周の旅を始めて、大きく変化したものの一つに
「食」に対する考え方があります。

これまでは近所のスーパーに置いてある野菜をなんとなく買い、
なんとなく調理して食べる。
産地を気にすることもなく、旬を気にすることもなく。

でも京野菜や金沢の加賀野菜長崎での取材を通して、
その土地には本来、その地の気候や環境にあった野菜が作られ、
人々はそれを食べることで健康を保ってきた
ということが徐々に分かってきました。

流通が現代のように発達していなかった昔は、
多くの家庭で、自分たちで食材を作っていました。

また、今でも、本業としての農家ではなく、
自分たちの食べる食材を家庭菜園で作る人々や
自分のレストランや宿で提供する食材を
自分たちで作る人々がいることを知りました。

そこで、食の安全性が叫ばれている今日において、
一番手っ取り早くそれを確保するためには
"自分たちで食べるものは自分たちで作るのがいいのではないか…"
という考えに達したのです。

仕事時間の半分を、自分たちが食べる食材を作ることにあて、
残りの半分で、自分の専門分野の仕事をする、
「半農半X(エックス)」という生き方。

今回、京都にこの「半農半X」のコンセプトを
90年代半ばから提唱している方がいると聞いて、訪ねてきました。

京都市内から車で2時間弱の綾部市に住む、
「半農半X研究所」の塩見直紀さんは、大学卒業後、大手通販会社に就職。
早くから環境問題に意識を持つ会社であり、
塩見さんも自然と同じマインドになっていったといいます。

また、28歳の時に読んだ本の言葉に衝撃を覚えます。

「我々は後世に何を遺して逝こうか、
金か、事業か、思想か」

これは、キリスト教思想家、内村鑑三の33歳時の言葉で、
塩見さんは自分も33歳で次の道に踏み出すことを決め、
実際に33歳で会社を辞めました。

「会社の同期が芸術肌でみんな個性的だったんですよ。
自分には何もないって思って。
そんな時に、作家・翻訳家の星川淳さんが自分自身の
農業をやりながら仕事をするスタイルを"半農半著"と表現していて
これだ!と思いましたね。
自分の"天職"を探す意味で、"半農半X"って置いたらしっくりきて」

塩見さんは実家のある綾部市にUターンして、
自分たち家族の食べるお米や野菜を作りながら、
この「半農半X」という生き方を発信することを生業にしています。

※写真は塩見さんの著書

塩見さんいわく、持続可能な循環社会においては
"食べる物の自給"と"自分の夢の自給"の2つが必要だといいます。
人は何か食べないと生きていけないし、
人には生まれてきた意味があり、生きる意味が要る。
みんなが自分のミッション(X)を叶えて自走しつつ
周囲と和して生きる社会が理想である、と。

では、各々のミッション(X)はどのように見つけたらいいか?

「Xは、すでにやっていることだったり、意外と足元にあることだったりします。
アイデアって既存のことの組み合わせですから」

そういって、こんなX発見のための方程式を紹介してくださいました。

X =
3つの自分キーワード(好きなこと、得意なこと、興味があること、気になることなど)
/ 場所(故郷or今いる場所)

「"1人1研究所"の提案もしていきたいですね。
一つのことを極めることでそれがXにつながると思います。
個性的な小さな"○○研究所"って日本全国いろいろあって、
その多様性が面白い」

この「半農半X」の考え方は、日本国内のみならず、
台湾や中国、韓国などにも広がりを見せているそうです。

「大量生産、廃棄の足し算の時代は終わりました。
これからは引き算の時代。
ライフスタイル、働き方、生き方を変えていかないと」

もし、あなたが「半農半X」という生き方をするとしたら、
もし、自分の研究所を作るとしたら、
Xに何が当てはまるか…。

一度考えてみると何かが見えてくるかもしれませんね。

私たちも半農半Xを具現化すべく、
Xを追求しながら残りの旅路を楽しみたいと思います。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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