MUJIキャラバン

寄木細工を現代のくらしに

2013年04月10日

箱根の寄木(よせぎ)細工。

箱根や小田原を訪れたことのある人なら、
お土産屋さんなどで見かけたことがあるかもしれません。

ちなみに、毎年盛り上がりを見せるお正月の箱根駅伝で、
往路優勝チームに贈られるトロフィーは、寄木細工で作られているそう☆

1200年続くといわれる、箱根・小田原の木工の歴史の中で、
この技法は比較的新しく、江戸時代末期に箱根町畑宿に住む
石川仁兵衛氏によって創作されたといわれています。

石川仁兵衛氏の孫に弟子入りした曽祖父の代から続く、露木木工所の
4代目・露木清高さんを訪ねました。

「箱根山系は、木材の種類の多い所として、日本でも屈指の地域。
字のごとく、その種類豊富な"木"を"寄せて"作ったのが寄木細工です」

箱根で寄木細工が始まった理由を露木さんはそう話し、

「実はすごく地味で、根気のいる作業なんです」

と、その産地が全国に広まることなく、国内では箱根と小田原だけの
技術であることを教えてくださいました。

現在は全国から様々な木材を仕入れ、その天然の色を生かして、
多種多様な模様を作っています。

まず、木を細かく削り、

一定の形に切り出した多くの木片を寄せて、文様のパーツを作っていきます。

そうして作ったいくつものパーツ(写真左下)を組み合わせて、
種板(写真右下)を製作。

その後の工程は2つに分かれ、種板をカンナで薄くスライスしてできた
"ヅク"と呼ばれるものを、木製品の表面に接着して作る「ヅクもの」と、

種板をそのままロクロで削り出して成型する「無垢もの」があります。

寄木細工の模様は、木の組み合わせ次第で幾通りもあるといい、
「ヅクもの」の場合は、量産も可能だそう。

まさか寄木細工が、金太郎飴のように作られているとは
思ってもいませんでした!

そんな寄木細工をもっと多くの人に知ってもらいたいと、
露木さんは2005年に平均年齢30歳の若手職人とともに
「雑木囃子(ぞうきばやし)」というチームを結成。

定期的に集まりを設けて、お互いの技術向上を目指し、
また、作品展を開催して、寄木細工のPR活動に勤しんでいます。

そんな雑木囃子に、活動4年目の2009年に転機が訪れたと
露木さんは振り返ります。

神奈川県の産業支援事業で、プロダクトデザイナーの喜多俊之さんが
講師として、商品企画の段階からアドバイスをしてくれることになったのです。

その結果、メンバーそれぞれが自分の得意分野を生かして、
6人6様の商品が出来上がっていきました。

現代の生活に合ったワイングラスやスマートフォン置きを手掛けるのは
石川裕貴さん。

ご自身の娘さんに、とボタンを作ったり、
日常雑貨を作るのは、太田憲さん。

自分と同世代の若い人にも寄木細工を使ってほしい、
とベルトのバックルやアクセサリーを手掛ける、小島裕平さん。

とっても細かい作業を得意とし、小さな秘密箱やオルゴールを作るのは、
篠田英治さん。

音楽を好み、音の出る寄木細工を生み出した、清水勇太さん。

そして、動きのある大胆な寄木を手掛けるのが
今回お話を伺った露木清高さんでした。

彼らの作る作品は、伝統技法を用いながらも、
どこかモダンさを感じるものばかりです。

露木さんは、

「地場で育った寄木細工の技術や考え方を大切にしながら、
ものづくりの幅を広げていきたいです。
日常品に寄木細工を生かして、それを使ってもらえれば、
生活文化に今後も寄木細工が根づいていくと思うんです。
それって素晴らしいことですよね」

と寄木細工に懸ける想いを語ってくれました。

神奈川県にのみ伝わってきた、伝統技術の寄木細工。

これを現代のくらしの中に自然と取り入れられるようなものづくりをしようと、
同世代の職人さんたちが活動していることを知って、
同じ神奈川県民として誇りを感じずにはいられませんでした。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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