無印良品の家 メールニュースVol.81
 
団らんの記憶―「こたつ」

日本人とこたつ
日本人は、こたつに入って、家族でテレビを見ているという団らんの記憶がずいぶん多いようです。先日行なった「みんなで考える住まいのかたち」のアンケート、第3回「家族とのコミュニケーションについて」でも、子供のころの団らんの場所はという問いに、こたつと答えた人が72.4%だったのです。
この結果にびっくりしたと同時に、どこかほっと安心した気持ちになりました。やっぱり、「日本人はこたつ」なのでしょうか。そのほか、茶の間と答えた人が45.4%もいました。
日本人の団らんの場所は、明治以降、西洋化の道を歩んできた影響を受けながら、日本的な空間のまま進化してきたようです。
子供の頃の団らん場所


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西洋化の象徴である「家族の団らん場所としてのリビングルーム」は、今回のアンケートを見ても、子どものころにここで団らんをしたと回答した人は21.2%で、決して多くはありません。 考えてみると、日本ではリビングルームは、そもそも応接間として使うことから始まりました。そこが家族の団らんの場となるのには随分と時間がかかりましたし、アンケートの結果をみても、いまだ定着したとはいえないかもしれません。

確かに、戦後の公団住宅では個室とダイニングキッチンだけでした。
そこにリビングが定着するのは、1970年頃のようです。当時の雑誌や住宅メーカーの広告をみると、アメリカの典型的な住宅が紹介され、リビングのソファで家族が幸せそうに過ごしている風景が多く紹介されています。
しかし、実際の日本人の生活は違っていました。実際に使われる日本の居間には、こたつがあらわれます。使い慣れたこたつは、やはり日本人の生活に溶け込み、団らんには欠かせない存在であったのかもしれません。こたつの上には、かごに入ったみかんが置かれ、その傍らに、暖炉ではなく、テレビが置かれるようになりました。
どこか懐かしい日本の家庭らしい風景ではないでしょうか。

実はこたつの起源は、古くは室町時代にさかのぼります。
当時、いろりの上に櫓(やぐら)をかけて、布団を乗せたことがこたつの始まりだったようです。そして、掘りごたつが生まれるのは、それからずっと後の明治の終わり頃といわれています。一般の人々に普通に使われようになったのは、さらに後の時代、電気ごたつが生まれた戦後1955年以降のことのようです。
隙間の多い日本の家屋では部屋全体を暖めるよりも、部分的にあたためるほうが効率も良かったのでしょう。そして、床に座る文化をもつ日本人には、こたつは圧倒的に快適だったのです。
こうした背景があって、リビングが急速に定着してきた現在においても、テーブルやソファが置かれたリビングであっても、そのソファの前に、こたつも置いて、そして、座って団らんという風景が生まれていったのかもしれません。

見直される「床座の生活」
第3回目のアンケートの中で、「子供の頃の団らんの記憶」、そして「現在の団らんの風景」、「将来の理想の団らんの風景」を時間軸でお聞きしました。そのことによって、「過去の記憶」が理想の風景に、どう関わっているのかを探ってみたかったのです。
アンケートの結果から、理想の風景をこたつと答えた人は29.2%ですが、子供の頃こたつで育った人の50%以上が現在もこたつで過ごし、将来もこたつを団らんの場所にしたいと答えています。このことから、子供の頃の記憶が、理想の姿と深くつながっているといえそうです。
一方、興味深い結果も出ています。子供のころ、団らんはリビングで過ごしたという若者も、現在、将来と、家族の団らんはこたつがいいという人が多くいるのです。
将来の団らんの場所“こたつ”選択者の過去の変遷


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アンケートからは、こたつだけでなく茶の間など、「床座の生活」が見直されてきているように感じられます。
それは、決して広くない日本の住環境を、広く快適に住まおうとする知恵と重なるのかもしれませんし、靴をぬいで生活するという日本人独特の住文化によるものかもしれません。
床に座るだけでなく、場合によってはそのまま寝てしまうこともできる。そんな過ごし方ができる清潔な暮らしの習慣を、日本人はもっているのです。

いま私たち日本人は、急速に西洋化した住まい方を、もう一度見直し、日本人としての住まい方を考えるようになり始めたのかもしれません。
今日、提供されている多くの日本の家は、かつてのような隙間だらけの家ではなくなりました。
こたつの持つ、効率よく暖を取るという機能は、必要なものではなくなったのかもしれません。しかし日本人は、こたつのぬくもりと家族が集まって過ごした時間の記憶を懐かしく思っているのでしょう。

住まいのかたちは、人それぞれです。私たちは、住まいのかたちを日々考え抜いています。アンケートを通して、みなさんと一緒に現代の住まいについて考えていけることに感謝しています。
そして、大変多くの気付きやご意見をいただけることを、これから私たちが提案する様々な行動に反映させていきたいと思っています。

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